UnBooks:車軸と両輪

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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序章[編集]

昔々のお話です。とあるサイトに、一人のベテランユーザーがいました。ベテランユーザーは毒舌なことで有名で、時には相手を小ばかにしたり、鬼みたいな形相で迫ったりして、荒らししょんべんたれのお子様を泣いたり笑ったりできなくしていました。

ジャンクにしてしまいたいと思っていました。

そんなベテランユーザーは、とあるもう一人のベテランユーザー(分かりにくいので、仮にエヌ氏と呼ぶことにします)のことがあまり気に入っていませんでした。ベテランユーザーは編集の思想でいうところの「選民主義」的な傾向があって、どうしようもないほどに手のつけられないおばかさぁんジャンクにしてしまいたいと思っていました。

そんなベテランユーザーにとって、初心者に甘くて子供にも優しく接しているエヌ氏はただの甘ったれに見えました。会話ページで3000バイトどころか5000バイトぐらいにもなる文章を書いている様子は、金星から来た宇宙人にさえ思えました。そして、ベテランユーザーはいつしか、エヌ氏のことを太陽をパクパクパクしている人に向ける視線で見るようになりました。

ベテランユーザーはエヌ氏がどうしてこんな行動をしているのか、不思議でたまりませんでした。そして、どうしてか知りたいと思うようになりました。

一章 エヌ氏の日記[編集]

ベテランユーザーの友人には、スーパーハッカーがいました。そこで、ベテランユーザーはスーパーハッカーに頼んでエヌ氏のパソコンのデータを盗んでもらいました。なぜそんなことができたのかはお察しください。だって、スーパーハッカーなのですから、それぐらいできて当然なのです。「山田オルタナティブでファイルが流出してしまった」なんていう設定にしてしまうと、エヌ氏が可哀想です。

ベテランユーザーは、たくさんのテキストファイルを手に入れることができました。たぶん、エヌ氏は記憶喪失のために控えをとっていたのでしょう。ちょっと目を通してみると、書式のちゃんとした記事から一行ネタの走り書き、コピペ用のソースまでたくさんの文字が連なっていました。

ある一つのテキストファイルには、会話ページでした注意文がまとめてありました。ベテランユーザーは何か分かるかもしれないと思い、どんどん読み進めていきました。大抵の文章はとても優しいものでした。ですが、ある日付に差し掛かったときです。ベテランユーザーは、ふとマウスホイールを回す手を止めました。

その日付には見覚えがありました。その日は、ちょっと困った悪い子が元気にしていた日でした。いつもの優しい口調のエヌ氏の署名のあとに、こんな文章が続いていたのです。

ジャプニカ暗殺9.jpg

8月32日()

そういえば、近所にのような生き物を飼っているお宅がありましてね。サッカーボールぐらい小さいんですけど、その猿がよく吠えること吠えること。幼稚園児とか小学生あたりはその猿のような生き物を怖がっていて、その家の前を通るときはとてもビクビクしているんですよ。でも、その家の門には頑丈な柵があって、お猿さんはまず出てこられない。ついでに、庭先に杭が打ってあって、頑丈な鎖が首輪と杭を繋いでいる。で、人が通りかかると物凄い勢いで飛びかかろうとしてくるんですが、紐の長さが足りなくて柵のそばまで行くことができない。それでも飛びかかろうとするから、首が絞まる格好になる。それがまたなんとも滑稽で、小学校高学年あたりのお子さんが面白がって近づいたりしているんですよ。微笑ましいと思いません? お猿さん以外は。

なんでお猿さんはあんな行動をするんでしょう? 不思議ですよね。だって、相手を警戒させたり怖がらせたりするだけならただ吠えるだけでいいのに、わざわざ自分で自分の首を絞めている。まあ、柵まで近づいていって吠えれば効果的なんでしょうけど、鎖で繋がれてるのが分からないんでしょうか? 相手に飛びかかれないなら、最初から届く範囲で吠えていればいいのに。

ただ、今日はなんとなくそのお猿さんの方が可愛げがあっていい、少なくとも毒を吐いたりするわけではないから、なんて考えています。ま、なんのことはない世間話ですけどね。


ベテランユーザーは、エヌ氏がこれを書きこんでいないのは正解だと思いました。なぜなら、ベテランユーザーが書いた簡単な皮肉さえ、困った悪い子は理解できた様子がなかったからです。幼稚園児用の絵本さえ読めないのに、小学生用の教科書を理解できる子はいないですからね。困った悪い子は、本当に世間話をされたと思ってしまうでしょう。

ベテランユーザーは昔のアンサイクロペディアの香りがする文章を少しだけ意外に思いながら、さらに読み進めていきました。

二章[編集]

それからしばらくは、必要以上に懇切丁寧な会話文が連なっていたので、ベテランユーザーは退屈しました。マウスのホイールを勢い良く回して流し読みをしました。ふと、ベテランユーザーは風の息づかいを感じました。そして、気配を察知したとおり、またエヌ氏が投稿しなかった文章を見つけました。どうやら、投稿ブロック期間明けに戻ってきて悪さをした、前回の子宛のようです。

おだてブタ.jpg

9月31日(曇り

あなたはとても素晴らしい才能をお持ちです。

通天閣という単語を見境もなく「劣化東京タワー」や「エッフェル塔のパクリ」、「大阪民国の象徴」と書き換えて、母親という単語に一々反応して「君の」だの「出ベソ」だの付け足せるというのは、立派な才能です。しかも楽しみながら出来ているのですから、あなたの天職は校正として出版社に入社することです。また、人をこき下ろすことにも興味があるようですね。にんまりと笑いながら毒づいているのが目に浮かぶようです。とても似合っていますよ。ただ、惜しいことにもっと罵倒語彙や理論整然さ、婉曲表現を学ぶ必要があります。人の意思を挫く言葉としては、全く足りません。

例えるなら、アンサイクロペディアは車軸とその先端に2つの車輪があるようなものです。2つの車輪はそれぞれ回っていて、車軸は別方向に行きたがっている2つの車輪を一つの方向に進ませる努力をしています。あなたは、このいずれにも属さず、ただ外から才能を発揮されているのです。ですが、悲しいことにその才能はアンサイクロペディアに作用していません。ですから、どうかこのアンサイクロペディアで才能を発揮されるよりも、社会のために役立ててください


三章[編集]

それからまた読み進めると、今度は極端に短い文章を見つけました。

4月31日(

Uncyclopedia:児童・生徒の方々へ から転送)


ベテランユーザーは、8月32日のものと違ってどんなに阿呆でも伝わると思いました。この日の子はもしかしてどころではなく、身体が子供で知能も子供か、そうでなければ身体は大きくても知能が子供のどちらかだとしか思えない子だったからです。ですが、エヌ氏は思い直したらしく、これの変わりに5000バイトほどの文章を投稿していました。

なぜ、人間としての生き方まで言って聞かせなければならないのでしょう。アンサイクロペディアは学校ではないのです。そんなの、パパママや、学校の先生の仕事です。

いまどきの教育方針は、水を入れたバケツを持たせて廊下に立たせたりなんてするはずはありません。むしろバケツに入れたぬるま湯とタオルを使って、まるで赤ん坊産湯をするみたいに教育するのです。ベテランユーザーはこんなゆとりを持って温室で育てたみたいな子供には、世の中の厳しさを教えてやるべきだと考えていましたが、こんな風に言っても悟るわけがないと思いました。

終章[編集]

今日もエヌ氏は丁寧に一年生の子に接しています。懐中に切り札を持っていることはベテランユーザーしか知りません。

ベテランユーザーはエヌ氏を見ながら、ふと考えました。エヌ氏がは決して善人なわけではないことが分かって疑問は解消できたけど、エヌ氏のもつこれだけの切り札が刃物として取り出されるときがいつ来るのだろうか、と。エヌ氏が土壇場にしょっ引かれたりした場面を想像してみましたが、確信めいた思いは湧いてきませんでした。

変わりに、車軸と両輪というエヌ氏の言葉を思い出しました。車輪は左側に据えられるともう右側に据わることはできず、車軸は車輪になることができない。ふと、そんな言葉が浮かびました。

おしまい


Upsidedownmainpage.jpg 執筆コンテスト
本項は第10回執筆コンテストに出品されました。