UnBooks:眠れる森のブス女

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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昔々ある森に、1人の少女と妖精たちが住んでいました。少女は森から大きな川を渡った所にある国のお姫様でしたが、五歳の時に意地悪な魔女に呪いを掛けられてお世辞にも綺麗とは言い難い顔に変えられてしまいました。これでは少女が周りの者からイジメられると心配した王様が、人が立ち入らない森に閉じ込めてしまったのです。そんな顔も親子の絆も残念な少女と、デリケートな部分に土足で触れるひねくれた妖精が何やら言い争いをしているようです。

「私もきっと素敵な恋人と幸せに過ごせるわ!」
「いや、君みたいなパーツの並びが個性的過ぎる顔ををした奴となんか誰も付き合いたがらないよ」
周りの妖精たちはまた始まったかと呆れたため息をつき、二人はいつものように口喧嘩を続けます。少女もここに連れて来られた十年前から森の外へ出た事が無く、自分の顔が悲惨なものだとは思わないので、二人の言い争いはずっと続きます。
「それじゃあ昨日思いついたいい考えがあるぞ」
ひねくれ妖精は自分と少女のどちらが正しいのかを証明する方法があると言います。それは少女に、人の男がキスをすると解ける眠り魔法をかけて試すというものでした。魔法の説明と少女が眠っている事を示す看板を森の外に作り、もしひねくれ妖精が正しければ誰もキスをせず、少女に魅力があれば誰かがキスをして目覚めることができるのです。少女がこの提案に怖気づいて黙り込むと決め付けていましたが、「いいわよ」と即答されてしまいました。
引くに引けなくなったので少女に眠り魔法をかると、森の中にポツンとあるベットで眠り込みました。

なんてこった、俺の21cmの槍が大活躍する予定だったのに。とんだペテンだぜチクショォ!!

もうこうなったら徹底的に楽しんでやる!と、ひねくれ妖精は看板の絵をあえて美人に描いて、本物の少女を目にした男達の反応を楽しむことにしました。案の定、男達はガッカリして引き返していきました。歯を食いしばる者、開いた口が塞がらなくなる者、orzする者とバリエーションも豊かで、他の妖精たちも大笑いです。
しかし、どうも様子がおかしいようです。本来なら3日で解けるはずの魔法なのに、一週間経っても少女は眠ったままでした。少女を囲みみんなで悩んでいると、眼鏡をかけた本好き妖精がハッと気付いて喋り始めます。
「生物にとっての最も幸福と感じる時は食欲、性欲を満たすこと…上物を頂けると思って希望を抱き、長い道のりを歩いたのにフタを空けてみたらとんだゲテモノだった……この落差による絶望感たるや、想像もつかない。その絶望の力を吸収した事により、魔法は強力な呪いとなってしまったんだよ!」
「なん…だと…!?」
妖精たちは凍りつき、ひねくれ妖精はぺたんと地面にorzしてしまいました。
「お城へ行って助けを呼ばなきゃ!」



妖精たちはお城から、王様と魔法使いを連れてきました。王様がベッドを心配そうに覗き込み、魔法使いはギョッと目を見開いた後喚き始めます。
「な、何ィー!?こいつはヤベェ!!いくらなんでも劣悪、醜悪、極悪過ぎる!トロールよりも化け物と呼ぶに相応しい! あとドレスが綺麗なのがまた七割り増しでムカっとする…失礼ながら、この世の物とは思えない不気味さだ……!!」
「それでも私にとっては(顔は別として)可愛い娘なんだ。そなたの力でどうにか出来ぬか?」
「呪いが強力になりすぎてどうにも…やはり条件通りにキスするしか無さそうです。しかしこんな化け物フェイスにキスしたがる男がいるのかどうか……一般的に考えて、ロバのケツに千回キスする方がマシかと…」

今まで少女の存在を隠してきた王様でしたが呪いを解くために妖精と協力し、自国はもちろん友好国から物好き連中を集めました。森へ行く前に何故か頬にグーパンチの跡が残る魔法使いから、地獄の主のような顔を見ても絶望しないようにと説明を受けた王子候補たちは満を持して少女の元へと行列を作ります。ですがあまりにも人間とかけ離れていたので、物好きの目から見ても少女の顔はナシだったらしく、誰一人としてキスする者はいませんでした。
王様は何十年もキス相手を探し続けましたが一向に見つかりません。少女は呪いの副作用で老いることなく元気にいびきをかきながら眠っていましたが、王様は老いていきとうとう亡くなってしまいました。

妖精たちは国が滅びた後もキス相手を探し続けますが、全ったく見つからず。やがては一人また一人と諦めていきましたが、それでもひねくれ妖精だけは探し続けます。何かと素直になれない性格だったひねくれ妖精は、そのせいで妖精たちの間で一人ぼっちでいました。しかし少女だけはいつも自分と本気で向き合ってくれたのです。それがケンカと言う形であってもひねくれ妖精は自分の家に帰った時に笑っていました。そんなケンカ友達とまた仲良くケンカする為にも、絶対に諦められないのです。



数百万年の時が過ぎました。もう地球上には少女しか人間が残っていません。生まれつき王様の豪胆な顔付きと王女様の鋭すぎる目付きと出っ歯を受け継いで、更に魔法でめちゃめちゃにな少女にもはやムコ無しです。これまでに何億人もの人にキスをお願いしましたが、みんな断られてしまいました。
ですが魔法の内容を思い返してみると別に地球人の男とは限定しておらず、異星人の協力という手段を思い立ちます。地球人とは美的価値観が違う異星人ならばという希望を胸に、宇宙へと旅に出る事にしました。でも地球以外の人から見ても、やはり恐怖と混沌を呼ぶすげぇ顔だったようでキス相手は見つかりませんでしたがまだまだ諦めません。異世界への扉を開き、別次元の宇宙に行って、そこでも見つからなかったらまた別の宇宙に行きました。

「確かにあの子はお世辞で美人と言ったら全美人にボディーブロー貰うレベルかもしれない。現世外生命体みたいな面構えかもしれない。おそらく全ての世界で一番残念な顔かもしれない。でも……それでもいつも一緒にケンカしてくれた、掛け替えの無い存在なんだ!!
ひねくれ妖精はキス相手が見つかるまで何度もオーロラ色の空間を移動し続けます。何度も何度も何度でも…そしてついに…

「おはよう、やっぱり私にもちゃんと魅力があったじゃない」
少女は眠りから醒めて誇らしげに言いました。姿はだいぶ変わってしまったけれど、ひねくれ妖精のことがわかるようです。
「そうだね…ボクの事はいいから、未来の王子様にお礼を言いなよ」
そう言われると、ひねくれ妖精の素直さに驚きつつも後ろを振り向きました。立っていたのは足が四本足でナメクジのように目が飛び出ている、おおよそ地球人の価値観では格好良いとは程遠い人。それでも少女はニッコリと笑い、相手も耳のような物をパタパタさせて喜んでいるようです。ひねくれ妖精は今までの疲れがドッと出たように座り込みました。ほんのつまらない意地がこんな事になりずっと後悔していました。けれども今になってみればそんな気持ちは微塵もありません。何故なら、今ここにいるのは奇跡的に幸せへの第一歩を踏み出した少

「ブッッサイクやのぉ(笑)

今から違う王子様を探しに行きましょう!」


「お前が言うなやこのドブスが」

ひねくれ妖精はケンカ友達とか関係なく静かにマジギレしましたが、無事に少女は妥協して二人は結ばれ幸せな生活を送りました。めでたしめでたし。


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本項は第19回執筆コンテストに出品されました。