UnBooks:桃太郎対麦藁海賊

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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桃太郎5

今日も空は晴れている。おかげで船は順調に進んでいる。次に目指す島まではしばらく距離がある。剣士は気分良く昼寝をしている。いつも昼寝しているが夜もやはり寝ている。

寝る子は育つというが少なくとも彼は子供ではあるまい。この剣士は3刀流という変わった剣術の使い手ではあるが幾千の戦いを勝ち抜いてきた男である。

波に揺られて走る船の上、考古学者の女がやはり書物を読み漁る。この考古学者も船長ほどではないが恐ろしい戦闘力を持っており、剣士が以前戦ったが、簡単にねじ伏せてしまった。剣士は賞金首で確か三千万の賞金首だったはず。それをなんともせずにねじ伏せるのである。

所変われば天狗と良く似た男が懸命にガラクタを弄繰り回している。しかしこの男は航海士を勤める女の愛用の武器を開発した男でありガラクタを用いた攻撃でなんだかんだでかなりの実力を持つ。しかし、主に使う武器はパチンコなのである。そのパチンコ球にもやはりいろんな細工が施されており、中には爆発を起こすものまで存在する。最近は掌に収まる謎の機械で衝撃波を出したり炎を出したりしてかなりの武装力となっている。彼もまたこの船のメンバーの一人である。

「ここらで面舵いっぱい!この当たりは風が不安定だから漕ぐの大変だけど頑張って!」

地図を片手にあれこれと乗組員に指示を出しているのが航海士の女である。天狗の作った武器を用い、なんと気候を変化させて戦う。雨を降らせたり炎を発生させたりする事ができる。風を起こす事も可能でこれらの組み合わせで雨雲を作って雷を起こしたりもする。竜巻を巻き起こす事さえできる。これらの威力は決して微弱なものではなく、時には特殊能力を持った者でさえ倒してしまうほどである。特殊能力とは通常の人間には到底なしえない事ができるようになる能力でそれらは様々。ある木の実を摂取する事で手に入るという。そしてそれらの能力を得たものは海やプールなどにおいては一切の身動きが取れなくなるというリスクを伴う。この船にも3人ほどこういった能力を持つものがいる。先の考古学者もその一人で好きなところから手を生やし、自由に操れるというものだ。剣士がこの女に勝てなかった理由もそれで、考古学者が剣士の背中辺りから出現させた腕で剣士の全身を固めてしまったからである。さらに常人である剣士はそのまま関節を極められて遭えなく敗れたのである。

船内に通じる扉からチョコチョコと姿を現したのは2足歩行をする鹿。しかも喋るのである。この鹿…トナカイと言わねば本人が怒る。このトナカイは不憫にも特殊能力がつく木の実を食べてしまった。動物が食べると人のようになってしまうという能力で当初は毛むくじゃらの二足歩行巨大怪物だったが、能力も鍛える事が可能で鍛えるうちにこうしてペットに見えるサイズになる事ができる。このトナカイはさらに医学を学び、自らの生態を把握し、薬を開発してさらに5種類の変身を可能にした。医学を学んでいるだけに彼は船医としてこの船にいるのである。異様なまでの船長からの勧誘。そのまっすぐでどこまで逃げても追いかけてくるほどの誠意に感じ入り、ついに決意を固めてこうして船に乗ったのである。

そして調理場で腕を振るうコックがいる。彼は何と海賊にしてコックなのである。生い立ちがまったく同じのとある海賊に襲われた際、その船長と同じものを目指していた彼は船長に気に入られ拾われた。そして料理の腕を磨いたのである。その海賊も今ではただの料理屋として今も現役である。その弟子である彼はやはり料理と一緒に習った格闘術で戦う。剣士とは犬猿の仲でしょっちゅう喧嘩している。また女にめっぽう弱い性格で、航海士と考古学者の二人にはやたらにサービスがいい。彼もまたかなりの腕前ではあるが賞金首にはなっていない。

「お~~い!腹減ったぞ~~なんか食わせろ~~~」

船の先頭であぐらをかき、帽子が特徴的な船長。船内でも無類の強さを誇り、彼もまた賞金首でなんと1億の金額がかかっている。近隣では有名な大海賊7人のうち3人を簡単に撃破してしまったのである。しかし底なしに明るい性格ではあるが普段はどこまでもとぼけており、大飯食らいという特徴まで持っている。コックや航海士が日ごろ頭を痛めている第一原因である。しかし無類の強さである事と船長であるというのは紛れもない事実である。

「さっき食ったばかりだろ!もう少し我慢しろ。」

コックに即答されうなだれるがそれでもつまみ食いをする。つまみ食いをしたところでコックにいつも蹴り飛ばされるのである。

こうしていつもと変わらぬやり取りをしながらも遠めに孤島が見えた。小さい孤島で目的地でもないので素通りするつもりだったが、物凄い衝撃と共に船が無理やりその島にひきつけられていく。


「ちょっと、なにこれ!?どういうこと!?」激しい揺れの中航海士は絶叫する。

いつの間にか起きていた剣士が手動での方向転換を図るがいかんせん引く力が強く船はどんどん孤島に向かって流される。「舵がきかねぇぞ!!」剣士の声が船内に響く。とっさに天狗が叫んだ。「ぶつかるぞーーーーーーー!!!」そして船は孤島に乗り上げてしまった。そして次の瞬間である。船の帆が折れた。底に穴が開いた。壁も穴が開いた。次々と船が壊れいていく。「誰だ!チクショー。人様の船を壊しやがって」通称暴力コックが早くも船を破壊する犯人を見つけて殴りかかる。しかし、高速で動き回る影に一瞬で弾き飛ばされてしまった。

「ちっ、くりんくりん眉毛は引っ込んでろ。」言いながら剣士が刀を3本かまえて切りかかる。しかしことごとくかわされてしまう。「誰がくりんくりん眉毛だと!? マリモヘッド!」「あんだと!? 蚊取り線香がっ!」剣士とコックの不毛な争いが始まった。しかし、争っている場合でない事はすぐに影によって気づかされた。

「我が名は桃太郎! 拳を極めし者也!!」影はそう名乗った。


「ケッ、おとぎ話じゃねぇかよ。笑わせんじゃねぇぜ。」

コックが毒づいた。そして得意の足技で桃太郎に攻めかかった。とても人間業とは思えないほどの鋭いう動きで桃太郎を押している。桃太郎は防ぐのに手一杯という様子。しかし、誰の目にも明らかだったのは、桃太郎は片手で全ての攻撃を裁いているという事である。コックの早いけり技、全体重を乗せた大技。全てをかわすことなく腕一本で裁くのである。そしてとうとうコックの足を受け取ってひねり挙げた。「ぐおおおおおおおおおっ!!??」すかさずコックが距離を置くがすでに手を付いてなくてはならない状態である。桃太郎は息一つ乱れず静かに佇んでいる。そしておもむろに再び船を破壊し始めた。「おい、ちょっと待てよ。」次は剣士の登場である。

桃太郎の「我を倒さねば先には進めぬ」という無言のメッセージを理解したメンバーは戦う以外に他無いことを察知している。コックとはいえ実力ある彼を簡単にあしらう桃太郎に剣士はいつかの恐怖を覚えながらもつっかかった。再び剣を3本構えて次々と奥義を繰り出す。しかし桃太郎はその一切を全てかわした。鷹の眼の男を思い出すような身のこなしである。しかし唯一鷹の目の男と違ったのは刀を腕で受け止めた上にぽっきりと折ってしまったところである。

3本ともへし折られた剣士に後はなくなった。そして次の瞬間に剣士は五体を全てもぎ取られ首があらぬ方向を向いていた。同時にコックもまた全身が焼け爛れていた。いつの間にか桃太郎が放った赤黒い光に飲まれていたのである。

もはやどこが腕でどこが顔なのかさえわからぬほどに成っていた。船医が急いで駆け寄るが息はない。コックと剣士の 二人を一生懸命に手当てをする船医。

天狗は持ち前の臆病さでもはや声も出ないといった様子。しかしここで女が一人前に出た。考古学者である。

「ちょっとやりすぎなんじゃないの?」

さめた口調ではあるがかなり怒りの混じった声色である。そして少し念じると桃太郎の全身から腕が生えた。そして桃太郎の五体を掴み腕から足からの一切をあらぬ方向に曲げようとした。だが桃太郎は微動だにしなかった。そう…いくら捻じ曲げようとしても動じなかった。

「そんな…」考古学者が悲痛の声を上げた。

その刹那、桃太郎に胸倉をつかまれた。一瞬のうちに鈍い音が重なる。考古学者は全身の骨を砕かれていた。そしてまだがくがく震える天狗に歩み寄り同じ技で天狗の命をも奪った。船医がまたあわてて駆け寄るが二人とも息をしていない。

「こうなったらあんたいきなさいよ。あんただって戦えるんだから!」

航海士に言われたとたんになみだ目になりながら「勝てるわけねーだろっ! あの二人がやられちまったんだぞ!」と懸命に講義するが

「しょうがないじゃない! アンタしかいないんだから。」

今にも食いつかんばかりの形相で桃太郎をにらみつける船長だが最後の最後に戦う。いや、最後の最後まで手を出してはいけないのが船長というものである。なくなく戦意が桃太郎と対峙した。普段の小さい姿から大きな怪物の姿へと転身する。そして桃太郎に殴りかかった。

全体重を乗せた攻撃を簡単に受け止められ、カウンターのボディブローを食らった。かなりの距離を吹き飛ばされた。しかし、何とか起き上がり構えを取るがやはり今までの敵とは桁違いである。余りの状況に業を煮やし、航海士もトナカイを補助するように戦闘に加わった。早速に雷を呼び出し桃太郎に照準を定めるが…

「ぬるいわっ!」

桃太郎が放った赤黒い光に打ち消されてしまった。その隙を狙うというのはまさに航海士の先を読む戦いのそれでしっかりと竜巻を桃太郎の振り上げた腕のした、わき腹に向けてはなった。しかし、竜巻が桃太郎を捕らえる直前に桃太郎の姿が消えた。そして航海士が見失ったと思った瞬間には桃太郎は航海士の頭上にいた。そして痛烈なチョップで航海士の頭は打ち砕かれてしまった。船医のトナカイがまたもやあわてて駆け寄るが頭が完全に砕け、首から上が何者なのかさえわからぬ状態にある航海士にはなすすべもなかった。


そしてトナカイの背後から桃太郎は青黒く巨大な光の球をトナカイに投げつけた。

怒りで我を失う船長。その表情は今までに見せたことがない恐ろしさがあった。

「なんで…こんなことをするんだ…船を壊して、仲間をみんな殺して…なんで殺す必要があるんだ。俺たちがおまえに何をしたっていうんだ…こんな事をして…こんなことをして……」

「こんな事をしておまえに何があるっていうんだ!!!」

叫んだ。船長は叫んだ。誰よりも仲間を愛し、大切にする船長だからこそどんなに破天荒な性格でも皆付いてきた。そして同じぐらい大切にされていた船長の怒りはいまや誰にも想像はつくまい。しかし桃太郎はさめざめと答える。

「我は、我にかなう者を捜し求めるのみ。弱者に用はない。そして降りかかる火の粉を振り払ったのみ。この雑魚どもは己が力をわきまえずに、我に食いつきそして敗れた。それだけだ。」

「そんな理屈が…そんなめちゃくちゃな理屈が……」

「あるわけねぇだろ!!!!!」

そしてその場で腕を振り上げ、その場で拳を突き出した。桃太郎との距離はかなり離れている。しかし確かにその拳は桃太郎の顔面に当たったのである。これぞ船長の持つ特殊能力で全身をまるでゴムのように伸ばす事ができる。そして銃弾でさえも受け止め、跳ね返すことができる。以前全身を電気に変えることができる能力者と戦ったがこれもゴムという体質のおかげで一切のダメージをこうむることなく勝利を収めたのである。もちろん桃太郎の攻撃も跳ね返してしまう。その証拠に胸倉をつかまれ全身に攻撃を受けたがまったくの無傷だった。そして脳天からのチョップに対しても一切動ずることなく、今は互いの隙をうかがっている。だが、桃太郎はとっくに気づいていた。今まで一度も出した事がない灼熱の光球。あれさえ使えば何の問題もない。しかし、愉しみたいがために使っていないのである。青黒い光だまを放てば船長は全身丸こげになる。そして立ち上がる。赤黒い光球を放てば全身を傷だらけにしてまだ立ち上がる。

そして一切の衰えを見せない猛攻撃をひたすらに放ってくる。それを簡単に裁いては蹴りつけ、距離を開けて光球を投げつける。そして桃太郎はとことん楽しんだ。そしてついに灼熱の光球をその手に生み出した。

船長が殴りかかる。腕を振り上げ、数秒後には信じられないスピードでのもう攻撃が始まる。その直前に・・・・

骨すら残らない謎の赤黒い塊。その傍らにはひっそりと麦藁帽子が横たわっていた。



そして男は再び戦場へと歩を進めるのだった。