UnBooks:少年がヘイホーになるまで

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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少年は、野菜が嫌いだった。

厳格な両親は、毎日口酸っぱく野菜を摂取するよう少年に言い聞かせ、強制した。

栄養がふんだんに含まれているらしいが、口ざわりも歯ごたえも最悪で、このようなおぞましい食べ物を毎日食べなければならないことは、拷問に等しかった。

少年は、自分の顔が嫌いだった。冴えない風采を、周囲から馬鹿にされた事もあった。 こんな顔捨ててしまいたい、そう思っていた。

少年は、不公平に憤りを感じていた。何故、成績などという、優劣を分ける教育制度を採用するのだろう。全体的に成績の悪い少年には、成績制度そのものがプレッシャーであった。全てが平等であればいいのにと、いつも思っていた。

ある日、学校からの帰り道、少年は勧誘を受けた。

勧誘してきたのは、赤字の服に身を包み、仮面で顔を隠した怪しい二人組みだった。

背丈から、恐らく年齢は自分と同じくらいだと、少年推測した。

怪しい二人組はいう。現実に辟易していないかと。

彼らは、自分達は顔や成績で差別されるなどの不公平もなく、毎日野菜を食べずに済む理想的な世界の住人だといった。

君も理想の世界の住人になりたくないか。二人組は誘ってきた。

甘言に惑わされた少年は二つ返事で承諾し、二人組についていってしまった。

無意識の内に、少年は二人組によって壮麗な宮殿へと案内されていた。

中央の玉座には、恰幅の良い、ヒキガエルのような生き物が鎮座していた。

この世界の王様らしい。

王様は指摘する。世界の理不尽さに疲れたような顔をしていると。

正鵠を射た指摘だと少年は思い、頷いた。王様は続ける。

ここは全てが平等な世界であり、苦痛を味わうことなく悦楽の内に月日を過ごす事ができる。

ただ一つ、この世界の住人になるための洗礼さえ受ければ良いと。

少年はまたもや二つ返事で、洗礼を受けることを承諾した。

少年は、とある小部屋に連れてこられ、テーブルに座らされた。

やがてそこに、皿が並べられた。その上には、薬草のようなものが並んでいる。

少年は叫んだ。野菜を食べなくても良い世界だと聞いた、話が違う、と。

激昂する少年を王様は宥め諭した。これは野菜ではないし、食べる必要もない、

ただ、この薬草の匂いを数日間に渡って嗅ぎ続けるだけでいいのだ、と。

嗅いで見ると、とても芳醇な匂いがした。肉体と精神が悦楽で満たされるような、心地よい感覚に包まれた。

推奨されるまでもなく、少年は薬草を嗅ぎ続けた。

1ヶ月ほど経った後、少年は突如薬草を取り上げられた。芳醇な匂いに耽溺していた少年は、薬草を返してくれと、狂人のように詰め寄った。だが王様の使者はただではくれてやれないという。

曰く、もっと薬草の匂いを嗅ぎたいのなら、教会に行き、定期的に下される神託をありがたく拝聴しなければならないそうだ。

少年は言われるがままに教会へと行き、神託を拝聴した。神のお告げ、と称するには何かが違う、そう違和感を感じたが、薬草欲しさに耳を澄まして拝聴した。

数ヶ月の時が流れた。

「かつて少年だった生き物」は、かつて自分を勧誘した二人組のように、赤字の服を着装し、仮面で顔を隠し、自分と同じような格好をした子供達と共に、王様の前に整列していた。

王様が命令する。知人の亀野郎が、邪魔な赤ん坊と恐竜を始末するのに、人手が欲しいからお前達を派遣することになった、精励恪勤して任務に従事せよ、殊勲を挙げたものには好きなだけ快楽を味わわせてやる、と。

「ヘイヘイホー」

他の一同と共に彼は呼応する。もはや、かつて自分が野菜嫌いでうだつの上がらない少年であったことさえ忘れていた。

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