UnBooks:小さな少年

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
移動: 案内検索

あるところに少年がいました。
その少年は一本の樹のことが大好きでした。
樹は毎日その少年がやってくるのをみていました。


ある日、少年が樹の下にやってきました。
樹は言いました。
「いらっしゃい、ぼうや。わたしにお登りなさい。枝にぶらさがって、りんごをおたべなさい。わたしのこかげで遊んで、しあわせにおなりなさい」
「いや、いまはそういうのはいいんだ」
と少年は言いました。
「もう冬が近いから寒くならないようにしないといけないんだ」
少年はもってきたわらで樹の周りをぐるぐるまきに囲みました。
「これでもう寒くないね」
少年はそれで、しあわせでした。

つぎのある日、少年がまた大喜びにからだをふるわせ木の下にやってきました。
「おいで、ぼうや。わたしにお登りなさい。そして枝にぶらさがって遊んでしあわせにおなりなさい」
「いや、きょうもそういうのではなくて」
と少年は言いました。
「きみは長生きだからお医者さんにみてもらわないといけないよ」
と少年は言いました。
「このまちを代表するたいせつな樹だからこのひとにみてもらおうね」
と少年はつづけました。
樹は言われたとおり 少年のつれてきたお医者様の診断をうけました。
少年はしあわせでした。


つぎに少年はこころからしあわせな気持ちで樹のもとへ帰ってきました。
それこそもう口がきけないくらい。
「いらっしゃい、ぼうや」と樹はささやきかけました。
「楽しく遊びましょう」
「いや、そうではないんだよ。」
と少年は言いました。
「最近ここの辺りで新開発に伴う区画整理できみが伐採されそうになったんだけど、みんなで署名を集めて撤回させてきたよ。」
と少年は言いました。
「それと、長い間生きているきみのために立て札をつくってもらえることになったよ。だからちょっとここの周りを測らせてね。」
少年は手早く指示を出して測量をはじめました。
それで少年は、しあわせでした。

ずいぶん長い時間が流れ、
少年はまた もどってきました。
「ごめんなさい、ぼうや」
と樹は言いました。

「わたしにはもうなにもないの。あなたにあげられるものがー」
「いや、いらないんだ。なにも。ただ…」
「ぼくはきみのとなりにお墓をつくることにしたんだ。もう準備しているんだよ。この辺り一帯はぼくが買収して誰でもはいれる公園墓地にしたんだ。すぐにみんながやってくるよ。」
少年は、そういいのこして、ひとり歩き去っていきました。

それで少年はしあわせでした。

おしまい

関連項目[編集]

たくましく育った少年から、よい子のみんなへ