UnBooks:吉野家コピペ

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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満月が西に傾き始めた頃、誰に会うとも知らずただひとり、今日もまた吉野家へと向かう。都会のビル群の一角にある吉野家へと。
この時間にカウンターを埋めるほどの客はいないが、しかし閑散としているとも言い難い。
のぼりも垂れ幕もない、深夜のごくシンプルな店内。
誰も彼も周囲に干渉せず、静かに時を刻んでいる。
向かいに座る青年は見慣れない顔だが、そのなりから三越百貨店に出入りする派遣だと分かる。
5,6千円で一晩はたらき、仕事が終わってやってきたのだろう。
空席をひとつ挟んだ隣の4人連れは、魚民のアルバイト仲間だろうか。こちらも仕事あがりと思われる。
4人揃って特盛を注文している。大学生だろう、若者のノリだ。
お前たちな、特盛はいいが、深夜の店内で騒々しくするのだけはやめてくれないか。
深夜の吉野家は意外にも色々な客が訪れる。タクシートラックの運ちゃん、『パパイヤボード』のママ、ホストカップル、熟年サラリーマン、…。
そんな彼らが深夜の静寂の中で、Uの字のテーブルで静かに牛丼を食らう、
まったく境遇の違う客が無言の中に一体感を感じながら食事する、そんな雰囲気がいいんだ。いつまでも騒々しい若者は勘弁してほしい。
そうしたら、後ろの2人掛け席に座った客が、ねぎだく大盛ギョク、と注文している。
深夜の牛丼屋ははじめてなのだろうか。
吉野家のメニューへのこだわりは分かるが、この時間に、ねぎだく大盛ギョク、と注文する客は珍しい。
しかも常連面して頼む彼は、逆に深夜の牛丼屋は素人であることを露呈させてしまっている。
だが他の客が何を頼もうと、反応する者はいない。この時間帯にひとりで店を切り盛りする中国人の張君も、注文を機械的に復唱して調理場へと消える。
常連面をして裏メニューを口にしてみても、深夜の牛丼屋では無意味である。
ただ一言、牛丼並み、これがこの時間にもっとも合った頼み方だ。
そう、誰もが知っている、もっともシンプルなメニュー、これに尽きる。
で、他のサイドメニューやトッピングは不要。これが粋なのだ。
無口な張君だが、しかし常連客は覚えている。たとえ、牛丼並みしか頼まなくても。
だから矢鱈めったら色々と頼みたい客はこの時間の来店はあまりお薦めしない。
まあ、昼と晩しか来たことのない自称吉野家通は、まずは早朝に来て朝定を頼むところからはじめることだ。

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