UnBooks:冒険の書

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この冒険の書はある勇者がつけたものである。

四月一日[編集]

今日はエイプリルフールだ。今日いきなり母さんから王様のところへ行きなさいといわれ鞄を渡されて家を追い出されてしまった。これがエイプリルフールだったらどれだけいいか。鞄を開けてみる。中身は水筒とわずかばかりのお金、そしてひのきのぼうと今つけている冒険の書しか入っていなかった。たったこれだけのもので何をさせようとするのだろうか。本当は正直家に引き返して遊びたいのだが母さんの送り出す際の表面上笑顔なんだけど戻ってくるなよと暗に言っている顔を見ているのでそれはできない。仕方がないので昼ごはんを馴染みのお店で食べる。そしてお金は使い切ってしまった。これで無一文だ。仕方がないから王のいる町に行くしかない。そうしないと帰れないから。空腹を紛らわせるために冒険の書をつけているが腹が減る。誰か飯をくれーーーーーーーーー。

四月三日[編集]

今日はやっと王のいる町へとやってきた。水筒の水だけで何とかしのぎ切ったので恐ろしく腹が減っている。自分は「まあさっさと王様に会えばうちに帰れる。そこでご飯をもらってうちに帰ろう。」と思っていたのがそれがいかに甘い考えか思い知らされた。お腹を鳴らしながら城に入ったら家来にくすくす笑われるし王にお目通りを願っても「あんたが勇者 (笑)」とまるで相手にしてもらえなかった。そのときは俺もこの世の終わりを見た気分だった。でも腹は減っている。ならば母のくれたひのきのぼうを武器に戦うしかない。母はそのために武器をくれたのだろう。おれは鞄からひのきのぼうを取り出すと俺を馬鹿にした家来に切りかかった。結果は言うまでもない。ひのきのぼうは真っ二つに折られ家来に軽くいなされて「おまえは勇者なんかになれねーよ」と一笑に付されただけだった。おれはその笑い声を聞きながら倒れた。空腹が限界に達したようだ。そして俺は今日城の医務室でこの冒険の書を書いている。医者が見かねて城の食べ物を一部分けてくれた。医者の行為に俺はこの冒険が始まってから始めて泣いた。泣きやんでから医者に今までの事情を説明した。そして医者はひとこと俺に「王様は隣町に花見に出かけて七日まで帰ってこないよ。」と衝撃の事実を告げた。つまり七日以降にしか王様に会えない=それまで帰れないということにおれはショックを受けた。医者は俺を憐れみ「七日まで泊めてやる。昼には勇者になるための知恵を授けてやろう。詳しくは明日言うから早く寝ろ。」と言ってくれたがそもそも勇者って何だろうか?おれはそれが気になって眠れない。

四月七日[編集]

あの医者は何者だ。おれは朝から晩まで医者が言うように折れたひのきのぼうを振り(医者いわく折れたひのきのぼうと俺は似ているらしい。)勇者としての勉強にいそしんだ。そのおかげで帰りは餓死せずに済みそうだが俺は勇者になる気などないのになぜ医者はこんなに熱心に勇者について教えてくれるのだろう。となぞに思ってきたころ医者が王に連絡がついたから王の間に行きなさいと言ってくれた。俺は飯と寝床をくれたことに対する感謝とわけのわからないことを散々させられた憎悪を同時に抱きながら礼を言って去った。王の間につくと王は勇者よよく来てくれたと歓迎してくれた。それはありがたいが俺は勇者じゃないとはとても言えない空気になってしまった。ざんねんだ。四日前に俺のひのきの棒を折りやがった家来も笑いをこらえながらぜひあなたに勇者の証を見せていただきたいと寄ってきた。そんなの持ってるわけねー。王は確かにいるなあと家来に俺の鞄を探るように命じた。俺のプライバシーって何……。家来は乱暴にかばんを開けひっくり返した。王はそれに怒り家来を叱りつけ始めた。おれはそんなことどうでもよく早く帰りたかった。一通り説教が終わると王はたいして多くない俺の荷物に目をやった。その瞬間「これが勇者の証ではないか。」とこの冒険の書を天高く持ち上げ満面の笑みを俺に見せた。そして家来に何かを持ってこさせた。飯?それとも金?と期待を寄せると王は俺に木箱を渡してきた。木箱を開けると中からどうのつるぎとわずかなお金が出てきた。王は「勇者よこれでモンスターや魔王を倒してくれ。」なんてとんでもないことを言ってきた。モンスターや魔王の存在も医者から聞いて初めて知ったのに俺にそんなもん頼むなと王にまっとうな抗議をしようとしたら王は「頑張ってきてね(はーと)」と発言し抗議する気力を奪った。そうして俺は魔王討伐に行かされる羽目になる。でも俺はうちに帰ることにした。だってめんどくさいもん。

四月十一日[編集]

俺は今日やっと故郷の近くに帰ってくることができた。なぜならみんなが俺のことを知っていて俺が帰ろうとするとあらゆる人がしつこく魔王のいる山はこっちよととうせんぼをしてくるからだ。俺はそれが十度目ぐらいの時についにキレどうのつるぎで切りかかったが相手は鋼の剣を取り出してどうのつるぎを真っ二つに折ってしまった。それから魔王討伐にいってきてね(はーと)といわれても俺はお前の方が強いだろとしか言えなかったが無視された。しかも折れた剣と冒険の書、そしてわずかばかりのお金と水筒しか持ってないのに追剥に襲われ身ぐるみを剥がされてしまった。俺は裸で木の幹に縛り付けられた。追剥の慈悲で冒険の書で股間を隠してくれていた。おれはそんな慈悲をかけられてもあまりうれしくなかった。しかも俺の周りには追剥よりも無慈悲な野次馬が寄ってきてあれが「勇者 (笑)」と後ろ指をさしてくるのである。当然の如く誰も縄をほどいてはくれなかった。そんなとき突然雨が降ってきた。ゴロゴロと雷鳴が響く。野次馬は俺を置いて去っていく。うれしくはあるが裸なのですごく寒い。でも雨のおかげで右腕だけは縄から抜けて自由になった。俺は股間の覆いになっていた冒険の書をとり今日の出来事を書いていく。不思議なことに冒険の書は濡れまくっているはずなのにインクが全く染みない。びっくりだ。まあがうるさいしこれぐらいにしておこう。だれか縄をほどいてくれー。


勇者は木に縛られたまま放置され、そして息絶えた。そして木には雷が落ち木は黒こげになり縛られていた勇者と冒険の書も墨と化した。今までの冒険の書は黒こげになった冒険の書を復元したものである。ここからは母の手記をみていただきたい。

四月十六日[編集]

私は五日前にとても悪い夢を見たの。息子が雷に打たれて死ぬ夢。怖くなった私は息子に預けていないもう一つの冒険の書を探すことにした。それに五日かかったから今日この日記を書いてるの。そして見つかった冒険の書には息子の筆跡で一日、三日、七日、十一日の四日だけ走り書きが書いてあった。息子の日記を読む。涙がこぼれおちた。息子は生きてるのかしら?私はもともとニート同然の息子を自立させるために王のところへ行かせたことを悔いた。私はやるせなくなって自暴自棄となりついに冒険の書を暖炉の中に放り込んだ。

四月二十二日[編集]

私は自暴自棄になった行動を悔いた。息子は死んだと決まったわけではないのだ。なぜ悪い夢を妄想して息子の行動記録を焼いてしまったのだろう。息子はたまに日記をつけてたから日記が更新されれば生きていることはわかったのに……。わたしは魔王を狩りに出かけすでに死んだ夫のことを思いながら何の意味もなく数日を過ごした。そして今日という日を迎えた。私は夫のぬくもりに触れたくて夫の冒険の書を開いた。夫は毎日記録をつけていた。そして命日の前日四月二十八日で終わっていた。私はそれを読むと妙に安心しお守り代わりに息子の名前を夫の名の隣に書いた。息子が生きていますように。

四月二十九日[編集]

私は夢を見た。息子が仲間たちと一緒に魔王と闘っているところを。私はそんなわけないことに起きてすぐに気がついた。そんなわけはないのだ、一か月そこらで魔王のところにあのニート息子がつけるはずはない。私はそんな夢を見た自分を恥じて一日を過ごした。そうして日が暮れたころ声が玄関から聞こえてきた。私は耳を疑った。息子の声だったからだ。私は「王のところに入ったのか。王は魔王を倒せと言ったはずだが。」と泣きそうになりながら息子に抱きついた。完全に言葉と行動が一致していないと今考えると恥ずかしくなる。そんなちぐはぐな質問に息子はこう答えた。「俺は木に縛り付けられて二十二日まで気を失っていた。起きたら素っ裸で木に縛り付けられていたはずなのに父さんの服を着ていた。なぜか魔法を使うかわいい女の子と腕っ節の強い男の子がいた。この二人はカップルみたいで嫉妬した。でも二人は僕のことをすごく助けてくれたし、医者にいろいろ教えてもらったことと装備が古臭いけどまともなものになったおかげで一週間で魔王の住む山についちゃった。そしたら父さんが三人の前に出てきて『ここからはお前が道を切り開け、俺はここで死んだ。同じ過ちは犯さないでくれ。』ていって消えちゃった。だから父さんのためにも三人で力を合わせて戦ったよ。そして魔王を倒したんだ。そしてあの二人はどっか言っちゃって仕方なく一人でここに帰ったわけ。だから母さんの言いつけは守ってるよ。」と。それは途中から夫の冒険の書にかかれた行動記録と一致していた。私は本当に泣いた。夫がニート息子を守ってくれたのだ。私は息子を家に入れてから冒険の書にありがとうと言った。