UnBooks:三匹の声豚

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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ある田舎町にブタの一家が住んでいました。一家の母親は子ブタたちに自立してもらおうとそれぞれ一人暮らしをさせました。
三兄弟は最初は寂しくて寂しくて仕方がありませんでしたが、その寂しさを埋めてくれる素敵な女性のおかげで元気に暮らしています。
実は人気声優・歌手であるカナリアちゃんの綺麗な声に夢中で彼女を女神様のように崇めていました。
彼女のCDや出演しているアニメのDVDがあればお金の許す限り沢山買いました。そして深夜のランキング番組にカナリアと出ると、自分の事のように喜びました。
彼女のために少しでも力になれるなら、三兄弟は貧乏な生活なんてへっちゃらです。

しかしある日の朝、何やらテレビではカナリアちゃんの事が話題になっていました。
なんとパパラッチによって、有名な漫画家のイーグルとデートしていた事が判明したのです。
その日の夕方、何故か三匹はネットカフェで落ち込んでいます。貧乏でもあんなに明るかったのに、どうしたのでしょうか?
そして落ち込んだその目にはやがて怒りの炎が灯り、三匹は突然怒り出しました。
「あの女…俺達ファンを裏切りやがった!!」
「どうせやるならメジャーリーガーのステロイドと同じで、やるんならバレないようにやるのが礼儀だろ。何がハートがドキドキ胸がキュンキュンだ、セックスしまくりの奴が翼を繋いだくらいでドキドキするか!キュンキュンしてるのはクリスマスの時のお前のクリぴースだろうが!!」
「クソッこうなったらみんなで抗議だ!」
三匹はただのファンで付き合っているわけでもないのに、まるで長年添い遂げた恋人に浮気されたかのような怒りっぷりです。



三匹はカナリアちゃんの事がまだ好きで、もっと自分達ファンを見て欲しい、気にかけて欲しいと思っていました。
そして新しく買ったCDを叩き割り、その画像をインターネット掲示板にアップするという奇行に走りました。
自分達は傷付けられたので彼女の歌も傷付ける権利があると思い込んでしまったようです。
他のファンからは97:3で非難轟々、時々賞賛でした。自分達はバカしか信じない信仰を棄てた勇気ある者という愚かな優越感に浸るもある書き込みに沈黙します。
『喚いてる奴等の居場所は特定した。今から食べに行ってやるぞ。』
三匹は焦りつつも、画面の向こうの何も出来ない奴の負け惜しみと鼻でフゴッと哂いそれぞれの家に帰りました。

長男ブタがワラの家に着いて一休みしていると、外から声が聞こえました。
「よくもCDを割るなんて酷い事をしたな!出て来い、食べてやる!」
長男ブタは飛び上がり、顔面蒼白になりました。あの書き込みはオオカミが書き込んでいたようです。居留守を装い家の隅でブルブル震えていると、オオカミは大きく息を吸い込んで勢いよく吐き出しました。嵐のような吐息でワラの家を吹き飛ばして、長男ブタは次男ブタの木の枝でできた家に逃げ込みましたが、オオカミすぐに次男の家にも素早く駆けつけました。
「カナリアちゃんの悪口ばかり言いいやがって!出て来い、食べてやる!」
すると意外にも扉が開き、オオカミが呆気に取られていると、そこにいたのはピストルを持った次男ブタが姿が…
バキューン!!バキューン!!バタッ
「あの世の果てまでさようならだ、従順に尻尾をふるだけしか能の無い負け犬さんよぉ」



カナリアちゃんを亡き者にする為に裏ルートで購入した次男ブタのピストルは、三男ブタの偽装工作によってオオカミの所有物だった事になりました。
近くに住んでいた羊の証言もあり次男ブタは正当防衛が認められて無実となりました。
しかしこの事件をきっかけに警察を巻き込んだ騒ぎとなり、ファンと元ファンの対立を激化させました。

三匹はカナリアちゃんの交際を糾弾する会を立ち上げ、他のブタと一緒に彼女が所属している事務所の周りを行進しました。
「そんなに処女がいいなら、そうゆうジャンルの同人誌でも買ってろよ」
たまらずファンのキツネが言い捨てると、もの凄い剣幕で眼鏡をかけた太ったブタが喚き始めます。
「エロ同人誌っていうのは俺達オタクの憧れの結晶なんだよ。男を知らない女の子で初々しいエロスを何度でも楽しめてさあ。でもなあ、ずっとキャラの声を聞いてるから声優本人とキャラが重なっちまうんだよ。初めてのぴーだからワクワクするんだ。他の男にブチ込まれた汚ねえぴーなんざ誰もいれたくねえだろ。声優だけならいいけどな、そいつが演じたキャラのぴーまでもが汚れるんだよ。ぴーに汚れがこびりついたヤリマンビッチブランドなんざ、この世に必要無えんだよ!!」
どうやら彼等はカナリアちゃんの演じたキャラしか頭に無いらしく、主張とは程遠い自分勝手な言いがかりを叫び続けます。

「もうみんなやめて!」
見かねたカナリアちゃんがブタたちに涙ながらに訴えにきました。
「私とイーグルさんは真剣に付き合ってるの。将来だって誓い合って…それなのにビッチだなんて酷いよ……」
ブタは全員怒り狂ってカナリアちゃんの元に突撃しました。警察と警備員を相手にもみ合い、辺りは地獄絵図と化しました。
「何を私は純粋ですアピールしてんだよ。男がいるって時点で声優失格なんだよ。ドゥーユーアンダスタン?理解したか?

「よいか皆の者!女性声優とは処女でいて当然の清き存在。汚れることなど許されない聖域…絶対不可侵の女神…にも関わらずこの者は、我々信徒に許しも請わず事実も知らせず、自ら男の手に堕ちて行った。何人たりとも許されざる重罪を犯したこの者は死をもって償い他に道は無し!者共、その身を剣に変えよ!処女は偉大なりぃ~!!」
古来より世界には踏み台にする者とされる者がいます。アニマル町のご馳走となったブタがそうであるように、オタクもまた食物連鎖のピラミットを支える礎なのです。シマウマがライオンに恋をしても成就することは絶対にあり得ません。

長男ブタが指示すると、ブタたちは服の下に巻きつけてあった爆弾を起爆させ、カナリアちゃんを焼き鳥にしようとしましたが、警察の力で阻止されました。

三兄弟は幽霊になって町をボ~っ見下ろします。すると、大泣きしているカナリアちゃんの姿を見つけました。
カナリアちゃんはあんなに自分の悪口を言っていたブタたちの死を悲しんでいたのです。三匹はやっと我に還り、激しく後悔しました。
三匹はただカナリアちゃんの声と優しい人格に惹かれたのに、いつしかアイドルという色眼鏡で見て、勝手な理想を押し付けていたようです。
例え恋人がいてもファンを大切にする優しい声優…その思いに気付けたのに、もう戻る肉体はありません。
「泣いている声も綺麗だけど、元気に歌っている声が聞きたかったな…最後くらいは」
三匹は最後にカナリアちゃんの声を聞き締め、悲しそうに天へ昇っていきました。


この人痴漢です!2-4.jpg
おまわりさん「これが声優ファン規制法、声優ファンの寝取られ系ゲーム三本以上プレイの義務化の発端となった騒動です。マイノリティながらその異質さにより注目を集めてしまい、オタクの世間評価を宮崎勤事件直後まで下げました。日常生活においての彼等は取り立てて問題があるわけでもなく、ごく普通の青年だったという話です。決して届かぬ一方通行の愛が嫉妬に変わるその瞬間、事件の臭いは香り立つ。嫉妬は憎悪へと変わり、憎悪は己を狂わせます。もしかしたら彼等は、オオカミなんかよりもよっぽど恐ろしい憎しみという怪物に、心を…優しさと思いやりを食べられてしまった哀れな青年なのかもせれませんな。これはあくまで友人の話ですが、ギャンブルと女は入れ込みすぎると身を滅ぼしてしまうらしいですよ。皆さんもどうかお気を付けください。」


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本項は第19回執筆コンテストに出品されました。