UnBooks:ロックン・ログ

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ロックン・ログ(Rockin' Log)とは、ネコ型ロボットであるミケざえもんが使えるひみつ道具である。木目が映えるデザインのエレキギターの形をしており、一心不乱にかき乱すことで自らの想いや記憶を内蔵された記憶装置にMediaWikiのフォーマットで保存する。自叙的な内容になるとは限らず、記憶された場の様子をありのままに記憶することもできる。どのような形で保存されるかは全て使用者のパッションに委ねられる。

以下は、私、セムツの祖父の遺品であるロックン・ログの記録である。手短に見ないと。もう少ししたら、そろそろ私は、母さんと晩ご飯の支度を始める時間なのだ・・・。


21XX年1月5日[編集]

「このバカじじい、野比休太のせいで、俺らは借金地獄だ。」
「私も本当に心苦しいよ。明日もまた、代行業者が取り立てに来ます・・・」
「おまけに子供の教育もなってなかった。あいつのせいで親父はDQNになって、西友で発泡酒が売り切れだっただけで俺に八つ当たりするような男になってしまった。」
「そのために私が、行くのですね。」
「そうだ。」
「時空警察が気がかりなのが心配です。」
「闇金の手回しなんだ。うまく行けば自分たちの不良債権も消えるのだからな。こういう事例はよくあるらしくて、フロントマンに『先生は不文律を頑に守ることと引換に有権者を貧しくするのですか?』と言わせて、粗品と共に国会議員を手懐けているそうだ。」
「信用できないのですが。」
「そこは大丈夫だ。奴らも、センセイすらも同じ穴の狢だからだ。時空警察が動いたら、あいつらも逮捕されたり、失脚したりする。提案しているのは俺らにだけじゃないからな。失敗したからと言って、事を大きくして脅すわけにはいかない。今までと同じ基準で、粛々と取り立てが続くだけさ。」
「余計なことを申し上げてすみません。承知しました。全てはあなたの仰せになるままに・・・」

日付不明[編集]

あったまギチギ〜チ♪
回ってクルク〜ル♪
それが一体な〜にか♪
俺ミケざえも〜ん♪

19YY年8月6日[編集]

この日であるが故に、今夜はテレビ朝日で映画「黒い雨」の再放送である。昔はこうだったのだなと感慨深く思うことは一切ない。22世紀でも毎年どこかのテレビ局で再放送しているからだ。

それにしても、あの祖父は、本当に改善する見込みがない。一言で言うと、ドツボにハマっているのだ。きっかけは彼のせいではない。凡人で、かつコミュニケーション能力が内向きに未発達であるが故の不運である。しかし、今日、我々の世界の方の医学常識から鑑みると、これは生得的なもので、彼が口下手であることは論理的に繕えても、無意識の中では首をもたげ、運命のように人生にまとわりつくのである。悲劇的なことに、この時代は体系だった方法論どころか、カウンセリングの「カ」の字も社会的に認知されていない。女児がリカちゃん人形でお慰みになる程度である。彼らは数世紀から十数世紀のヨーロッパを即ち唯一無二の暗黒時代としており、自分たちもいくつかの主要な暗黒時代のうちの一つにいるなんて夢にも思っていない。

私は、この世界で、毎日根気強く、主人の祖父のお守りをするしかないのだろうか。

19YY年9月11日[編集]

この日であるとは思えないくらいに、社会的には平穏な日々である。おならが出たところで誰も気にしない

しかしこの家では大事が起きていた。祖父が私の道具を悪用して夏休みの宿題を済ませたことが公に発覚してしまったのだ。

昨日、担任の教師が母、つまり主人の曾祖母を呼び出し、「宿題がキチンと出来ているのに、テストが0点なのは、通常の小学校の授業についていけないということです。」と指摘し、養護学級に入ることを薦めたのだ。その日のうちに家族会議になり、白状することとなった。

「頭のいい叔父の義母のはとこの甥に、宿題を代わりにしてもらった。」という形で伝え、一日両手にバケツを持って廊下に立ち反省文を書くことでこの世界としては事無きを得たのだった。しかし無意識に関する研究が進んだ我々の世界の見地からは重大な問題だ。

どんな形でも一度悪事を犯し、これから逃れてしまったものは、二度と全うに生きることができない――彼は未来の道具を使うという事実を隠蔽したが故に、この法則に該当してしまうのだ。確かにこれは絶望的であるが故に、現代の政府でも厳重に伏せられている。しかし事実は事実である。改善が極めて絶望的であることを主人に報告しなければならない。

19YY年9月13日[編集]

「それはお前のミスだろ。」
「申し訳ございません。」
「俺はひみつ道具の存在をあいつに伝えろとは一言も言ってないぞ。」
「あの方は好奇心だけは旺盛なのです。初めて会うが否や、ぬいぐるみと間違えて私に抱きつき、あちこちをまさぐっては、ポケットの中も確認されてしまいました。」
「悪い時に限って言い訳するよね。」
「申し訳ございません。」
「謝るのは一回でいい。こっちは昨晩知らない取り立て業者が来て、次回までに利息をが払えないと家を差し押さえるって言われたんだよ!」
「話が違いませんか? 取り立ての基準は変わらないと聞きましたが。」
「いいや。違いませんね。以前と同じ基準で、悪化するんだよ! お前頭いいんだろ? 何勘違いしてんだよ!」
「・・・・・・」
「親父は酒浸りだし、母さんはこれから夜働きに出ようかしらと言ってる。俺も内職の量を増やすことにしたけど、焼け石に水だ!」
「こっちの苦労も知らないで緑溢れる20世紀で行楽気分でいて、てめえ何様だよ。何してもいいから、とにかくあのクソジジイをガキのうちに何とかしろ!! 徹底的にな!! このたぬき頭!! ねずみ贈ろうか? ああ?」
ああ、あなた! インターホンよ! きっと昨日の方だわ! ノックもしてるわよ!! 何度も何度も! 何度も!! あなた!!! 酒瓶から手を離して!!!! お願い!!!!! あなたあああああああああ!

19YY10月4日[編集]

祖父は運動会の徒競走で今年もビリであったことを嘆いていた。嘆くだけ嘆いて、泣くだけ泣いて、疲れたのか眠りについた。

私はこの時を待っていた。主人の祖父がいつもより長い時間、意識を無くすことを。こんな腐ってしまった無意識より、私が直々に行動したほうがいいのだ。これが最善の方法だ。

私は4次元ポケットから必要な物品一式を出した。ひみつといえるものはタイムふろしきだけだ。あとはいつもは目もくれない、この世界にあるものばかり、クリーンシートに、麻酔薬に、メス。私は高機能なロボットだ。ブラック・ジャック程度の外科手術なら朝飯前である。でもこんな種々の機能ともおさらばだ。さあ、遠隔操作用の無線を切って、抜け殻から何まで、タイムふろしきで自然分解させてしまおう。私はたった今から、野比休太だ。


記録はここで終わっている。主人である私への報告義務からか、律儀にもこの記憶媒体は自ら・・・いや、祖父の体内に残しておいたのだ。

言い伝えによると、小学5年生の3学期以降、祖父は生まれ変わったかのように優等生となったらしい。出木杉という同級生も彼には叶わなかったとのことだ。絵に書いたように完璧な祖父は当時の最高学府であった東京大学を主席で卒業し東証一部上場の大企業へ就職。また、当時漫画家を目指しアシスタントとして天才的な才能を花開かせようとしていた年下の幼なじみ、モサ子との5年に渡る恋愛の末結婚した。そして当時ときめく産業であった情報通信業を行う会社を起業した。

全てが順風満帆であった。しかし彼には欠点があった。完璧主義者だったのだ。自らが人間となって10年以上。他の人間が不完全であることが理解できなくなっていたのだ。祖父は自らの完全性を身内、つまり祖母と父に求めた。脳は変われど、遺伝子は本来の野比休太。蛙の子は蛙。祖父もといミケざえもんは苛立ち、祖母・父へのDVの常習者となった。祖母は芸術家的に気を狂わせて隔離病棟へ措置入院となり、父は家庭裁判所でミケざえもんと引き離された。家族を失ったミケざえもんは鬱憤を従業員に晴らした。社内のあちこちからパワーハラスメントで訴えられ、巨額の賠償金を支払うことになった挙句に株主総会で祖父は辞めされられた。会社が支払うことになっていた更なる補償分の金額が全て祖父に損害として請求され、かくして俺の家族は、事を起こす前と同じように借金漬けとなった。前の現実が違っていたのかもわからない。むしろ、全く何も変わっていないようにすら思える。ああ、そろそろ母さんがパパの一人を連れて帰ってくる時間だ。本当のパパは目を剥き、涎を垂らして倒れているというのに。高級和菓子屋のぼた餅はもって帰ってくるだろうが、炊いた米なんてない。そして、そろそろ私も、本日最後のSSRIを服用する時間なのだ・・・。