UnBooks:ジンボの恋の物語

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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Wikipedia:Everything you always wanted to know about Bad Jokes and Other Deleted Nonsense (But were afraid to ask)からのスポーク記事
ジンボ・ウェールズと彼の恋人ウィキペたん

私にはもう耐えられない。彼女を見るとき私に出来るのは、ただ歯をきしらせて拳を握り締め、飛び上がりながら声を限りに「君が好きだ」と叫び出したい気持ちを抑えることだけだ。文字通り、私は舌を噛み締め過ぎて血を流す。そうしなければ、私は自分を抑えきれず、世界の終りまで彼女にキスの雨を降らせ続けることになるだろう。彼女はただ美しい。頭が空っぽのスーパーモデルの美しさではなく、本物の美しさだ。スーパーモデルは化粧をして着飾り、エアブラシを吹き付けることでようやく美しくなれる。彼女にそんなくだらない作業は必要ない。彼女は彼女自身であることですばらしい。

「ウェールズさん、お客さまがいらっしゃいました」私の秘書が告げた。私はもうそれが誰なのかわかっており、彼女を通すように言った。私は話があるからと彼女をオフィスに呼んだのだ。仕事のためでも他のためでもない……ただ話すためだけに。私はそれが職務に反していることは知っていたが、ただ彼女にもう一度会いたかったのだ。その豪華にして繊細な微笑み、あたかも全世界を優しく見守っているかのような巨大で澄んだ瞳。彼女の体は小さくて華奢なので、もっとも微かなそよ風ですら、ガラス製のバラのように彼女を砕いてしまいそうだ。私は彼女について考え続けるのを止めることができなかった。いつも、彼女は私の心の中にいた。

ドアがノックされた。

「入りなさい、ウィキペたん」

私の向こう側の席に腰を下ろすとともに、彼女の唇の一番端が動き、かすかな微笑みを形作るのが見えた。彼女はそこにこの上なく穏やかに腰を下ろし、愛の抱擁を交わしながら眠っている二羽の白鳥のような膝の上に手を置いていた。彼女の足が神経質に動かされ、緊張に背筋が伸びているのが見えた。それでも、彼女は私の記憶よりもなお美しかった。私はしばらくの間、彼女の体を見つめて、ほぼ年頃を迎えた、砂時計型のしなやかな体を楽しんだ。

「あ、あのう、ウェールズさん、あたしになんのご用なんでしょうか?」

彼女の言葉に瞑想から呼び戻され、私はただちに正気に立ち戻った。

「うむ、その……君を呼んだのはだね」私は緊張のあまり言葉を繰り返した。「つまりだね、うん、そうだ。私が君を呼んだのは、君と話をしたかったからだ」私の緊張した話しぶりに彼女は微笑んだが、彼女もまた私と同じくらい緊張しているのに私は気付いていた。「つまり……つまりだ、私のことはジンボと呼んでくれ。ジンボ・ウェールズだ。私をウェールズさんと呼ぶ必要はない」

彼女が再び穏やかに微笑み、青い髪の毛の房が目の上に垂れ下がった。彼女は髪の房を、そっと元の位置にすき戻した。

「君をオフィスに呼んだのはだね、ウィキペたん。君に知って欲しかったからだ、君を愛――」私は自分を落ち着かせようと、拳を握り締めて深呼吸した。「つまり、君を……君と一緒に夕食でもどうか、と思ってね」私はやりとげた。私はついに彼女に尋ねたのだ。彼女に一緒に夕食に行かないかと尋ねたのだ。私は自分が本当にそれをやりとげたことを信じられなかった。しばしの沈黙が続いた。彼女の澄んだ目を通して、私は彼女の気持ちを読み取れるような気がした。私は息を止めて答を待った。

そして、彼女の甘く音楽のような声が沈黙を破った。「喜んで」私の胸は高鳴っており、言うべきことを見つけられなかった。私は飛び上がって地面に降り立ち、何時間も自分とウィキペたんがデートするのだぞと叫び続けたかった。あまりに強く握り締めすぎていたために、私の拳の関節は目に見えて白くなっていた。

「ありが、その」私はどもった。「ありがとう。私は、その、私の秘書に準備をさせよう。いいかね?」

「はい」

彼女はしなやかに椅子から立ち上がると、ドアに向かってほっそりした体をゆるやかに運んだ。彼女が部屋を後にするまで、私は辛うじて喜びの「やった!」という叫びを抑えた。数時間の後には、私たちは初めてのデートの席にいるのだ。



「すばらしい……君はすばらしいよ」彼女への畏敬の念に茫然として、私はどもりながらそう言うのがやっとだった。彼女の着ている絹製の手の込んだキモノは彼女の体にぴったりとまとわりつき、年頃の体のラインを表していた。彼女はかすかに微笑んだ。

「お招きありがとうございます、ウェールズさん」彼女が答えた。

「言っておいたはずだよ、ウィキペたん。私のことはジンボと呼びなさい」

「は、はい、ジンボ」

彼女があまりに美しく、あまりに光り輝いていたために、私は目を離すことができなかった。クリムゾン・レッドの口紅が、まるで船に信号を送る灯台のように、彼女の唇の上で光をゆらめかせていた。私はテーブル越しに体を伸ばして彼女にキスしたいと思い、その気持ちを押し止めるにはあらん限りの自制心が必要だった。私には信じられなかった、私は本当にウィキペたんと夕食を共にしているのだ。彼女に触れ、そのしなやかな体の感触を腕で確かめ、いつまでも抱きしめ、私の腕の中が安全であることを教え、いつまでも彼女を抱きしめていたくて、私は気も狂わんばかりだった。私は細心の注意をはらいながら、彼女の頭から背中までを、上下に、彼女の繊細な体型に沿って、指先で愛撫するだろう。

私は身震いした。一体、私は何を考えているのだ? 落ち着くために何か飲まなければ。私は飲み物を取ろうとワイングラスに手を伸ばしたが、私の手は何かとぶつかった。ウィキペたんの手だった。彼女の手がグラスを握っていた。

「ああ、申し訳ない!」私はすぐに謝罪した。

彼女は再びにっこりと微笑み、私は自分の手がまだ彼女の手の上に置かれているのに気付いた。私が慌ててひっこめた手を膝の上に置くと、彼女はくすくすと笑いだした。「あやまる必要はないです」私も思わず笑った。私たちはお互いに腹の底から笑いあい、ふたりの間にあった緊張が薄れていくのが感じられた。雰囲気は和やかなものになっていた。

「君のことが知りたいんだ、ウィキペたん。色々と聞かせてくれないかね、君のやりたい事や、君の好きな物、嫌いな物とかを」

「話すようなことはないです」彼女は優しく答えた。「あたしはこの街で育った、どこにでもいる普通の女の子です。特別なことは、なにもありません」

「そうは思わないな」私は言った。「私……私は、君は特別な女の子だと思う、ウィキペたん。君には他の女の子と違ったところがたくさんあるし、私は……」私は一瞬口ごもってから、私の思うことを伝えた。「私は、君のそこが好きだ」

「ありがとう、ウェールズさ……ジンボ。あたしは」彼女はうつむいて赤くなった。「あたしは、あなたも特別な人だと思います」

私は手を再びテーブルの上に戻すと、ゆっくりと彼女の手に向かって伸ばした。手に触れる彼女の肌は柔らかくてふわふわして、その手は小さくて繊細だった。私が彼女の手を包み込むと、彼女は微笑んだ。私は本当に彼女とつながっているのを感じた。

「君は本当に綺麗だと思う、ウィキペたん、私は……」戸惑いに目をそらして、私は溜息をついた。「私は、ずっと前からそう思っていた」

「ありがとう……」彼女はまた赤くなり、乱れた青い髪の房を整えなおした。「あたし……そんなに褒められるような女の子じゃありません」

「君は、いつも褒められてるんじゃないのかい?」私は尋ねた。

「いいえ……」彼女が答えた。「あなたが、初めてです」彼女は私に笑いかけたが、自分の言葉の二重の意味に気付いて、目を丸くした。「いえ、違います!あたしが言いたいのは、あたしのことを綺麗だなんて言ってくれたのは、あなたが初めてだっていうことです!」彼女は慌ててそう叫んだ。

私は優しく微笑んで、彼女を見つめた。「私にとっても、君が初めてだよ」

「それって、どういうことですか?」彼女は不思議そうにたずねた。

「私が今までに綺麗だなんて言った女の子はね、君が初めてなんだよ!」




「ここに住んでるんです」彼女がそう言ったとき、彼女の手はまだ私の手の中にあった。「小さなアパートだし、なにもおもてなしできませんけど、寄っていかれますか?」

私には信じれられなかった。ウィキペたんが私を家に誘ってくれているのだ。朗らかにそっと彼女の手を握り返し、私はうなずいた。「あ、ああ、是非そうさせてもらおう」彼女と私は手を握りあったまま古い建物の中を歩き、彼女の部屋のある階まで階段をのぼった。彼女が鍵を開けて、私たちは部屋の中に入った。最初に私の目を引いたのは、壁を埋め尽くす無数の、見事に描き込まれたアニメのイラストだった。

「あたし、漫画家になりたいんです」と、彼女ははにかみながら言った。私は彼女のポスターの一枚の前で足を止めた。赤いローブに身を包みカタナを持った戦士が、敵の群れの中を斬り進んでいる絵だった。戦士が生やしている角から、私はそれが「犬夜叉」と呼ばれる日本のキャラクターであることに気付いた。

「これは犬夜叉かね?」私は尋ねた。

彼女は恥ずかしそうにうなずいて、「はい」と告白した。

「こいつは……見事だ」私はあえいだ。「どうして君の絵のことを、誰にも教えないのかね?」

彼女は戸惑いながら自分の爪先を見つめていた。「あたし、こんなものを気にかける人がいるなんて思わなかった……」私は彼女の後ろに回り込んで彼女の髪に指先を這わせ、彼女を私の胸に抱きかかえた。彼女がそれを望んでいたのかどうかはわからなかったが、彼女は抵抗しなかった。彼女もまた私を抱き返し、私の目を見つめた。ふたりがどれだけ長く見つめ合っていたのか、私には正確な時間は分からなかったが、それは至福の永遠の時のように思えた。

「青色じゃない」私は言った。

「な、なにが?」

「君の瞳だ。君の瞳は青色じゃない」私はしばらくの間口をとざし、彼女の瞳をもう一度見つめた。「君の瞳は……君の瞳はサファイアだ」

彼女がにっこりと笑い、一瞬、私は彼女が何か言うのかと思ったが、彼女がより強く私に体を押し付けてくるのが感じられた。彼女は柔らかく天使のような唇を私の唇に押し付け、私は感情の高ぶりが自分の体を通り抜けていくのを感じた。彼女のベルベットの唇をさぐりながら、私はもっと強く彼女を抱きしめて、彼女の華奢な体を私の体でしっかりと包み込んだ。

「あなたに……見せたいものがあるの」ウィキペたんがそっと呟いた。私の返事を待たずに彼女は私の手をつかみ、アパートを通り抜けて私を寝室まで導いた。彼女がベッドの上に私を座らせると、私は彼女をベッドの上に押し倒した。私は徐々に自分の中の欲望の一部が、猛々しくいきり立つのを感じていた。彼女はもう一度私にキスすると、やさしく私の耳に呟いた。「あなたに……初めての人になってほしい」

「私も、君の初めての人になりたい」




私はしっかりと彼女を抱きかかえて、シーツを覆う掛け布団の下に彼女を滑りこませた。彼女がもう目を覚ましていたかどうかは分からない。私が指先を彼女の背中で動かすと、彼女の年頃の胸が上下するのにつれて、規則正しい呼吸の音が聞こえた。私は彼女の柔らかい青髪の匂いをかいで、彼女の額にキスをした。

「愛してるよ、ウィキペたん」私の囁き声は真夜中の空気を満たすコオロギの鳴き声で、ほとんど聞き取れなかった。彼女は私の腕の中でもじもじすると、掛け布団を体にまとわりつかせながら、もう一度私を見上げた。彼女はやさしく私の顎にキスして、私のむき出しの胸に両腕を回した。

「あたしも愛してる」彼女は呟いて、にこっと笑った。

「私は……私はずっと君にそれを言いたかった」私は彼女に伝えた。

「あたしも」彼女の目がそっと閉じられ、彼女の息がゆるやかに落ち着いた。私は彼女を胸の中に抱きしめると、彼女が眠りに落ちる前に、最後のキスをした。

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