UnBooks:シコれペニス

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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Shikore Pennis.jpg

ペニスは勃起した。必ず、かの邪智暴虐の玉を除かなければならぬと決意した。ペニスは性器がかわかむりである。ペニスは、村の牧人である。尺八を吹き、陰茎を弄んで暮して来た。けれども亀頭に関しては、人一倍に敏感であった。きょう未明ペニスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのイカクサの市にやって来た。ペニスには父も、母も無い。女房も無い。長さ十六センチの、包茎のムスコと一人と一本暮しだ。このムスコは、近々、レーザー治療を行う事になっていた。ペニスは、それゆえ、ヌキ溜め用のティッシュやらおかずやらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路でぶらぶらさせた。ペニスには竹馬の友があった。フルチンアヌスである。今は此のイカクサの市で、オナニーをしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにペニスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、陰茎の萎えるのは当りまえだが、けれども、なんだか、陰茎のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなペニスも、だんだん不安になって来た。路で逢った老爺の股間をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が射精して、まちはイカ臭さがたちこめていた筈だが、と質問した。老爺は答えなかった。ペニスは両手で老爺の股間をゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる喘ぎ声で、わずか答えた。

「玉様は、人を犯します」

「なぜ犯すのだ」

「性慾を抱いている、というのですが、誰もそんな、性慾に応える気持ちを持っては居りませぬ」

「たくさんの人を犯したのか」

「はい、はじめは玉様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレトキス様を」

「おどろいた。国玉はホモゲイか」

「いいえ、ホモゲイではございませぬ。女だけでは、満足が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の体をも、お望みになり、少しく性的な体をしている者には、ひとりずつ尻を差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば精液をかけられて、犯されます。きょうは、六人犯されました」

聞いて、ペニスは勃起した。「呆れた玉だ。生かして置けぬ」

ペニスは、巨根な男であった。陰茎を、おえ返らせたままで、しこしこ膣にはいって行った。たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。しごかれて、ペニスの陰茎からは精液が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。ペニスは、玉の前に引き出された。

「この精液で何をするつもりであったか。言え!」睾丸テステスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その玉の顔は精液をかぶって蒼白で、眉間から垂れる精液の筋は、刻み込まれたように深かった。

「市を睾丸の手から救うのだ」とペニスは悪びれずに答えた。

「おまえがか?」玉は、弛緩した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの性慾がわからぬ」

「言うな!」とペニスは、陰茎をいきり立たせて反駁した。「人の勃起を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。玉は、民の陰茎をさえ疑って居られる」

「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の勃起は、あてにならない。信じては、ならぬ」睾丸は落着いて呟き、ほっと皺をゆるめた。「わしだって、和姦を望んでいるのだが」

「なんの為の和姦だ。自分の性慾を満たす為か」こんどはペニスが勃起した。「その気の無い人を犯して、何が和姦だ」

「だまれ、包茎の者」玉は、さっと皮を剥いて報いた。「口では、どんな清らかな肉棒でもしゃぶれる。わしには、人の海綿体の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、アナルを犯されるときに、よがり泣いて勃起したって聞かぬぞ」

「ああ、玉は技巧(テクニシャン)だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと勃起する覚悟で居るのに。萎えなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、ペニスは股間に視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に精をかけたいつもりなら、アナルを犯すまでに三日間の日限を与えて下さい。たった一本のムスコに、包茎手術をさせてやりたいのです。三日のうちに、私は高須クリニックでレーザー治療を終え、必ず、ここへ帰って来ます」

「ばかな」と睾丸は、嗄れた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言うわい。飛ばした精液が戻って来るというのか」

「そうです。戻って来るのです」ペニスは必死で精液を放った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。ムスコが、私が包皮を剥くのを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にフルチンアヌスというオナニストがいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が萎えてしまって、三日目の日暮まで、ここで射精しなかったら、あの友人のアナルを犯して下さい。たのむ、そうして下さい」

それを聞いて玉は、残虐な気持で、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ射精しないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男の肛門を、三日目に犯してやるのも気味がいい。勃起は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男をアナルファックしてやるのだ。世の中の、ホモフォビアとかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに射精して来い。おくれたら、その身代りの肛門を、きっと犯すぞ。ちょっとおくれて射精(だ)すがいい。おまえの肛門は、永遠にゆるしてやろうぞ」

「なに、何をおっしゃる」

「はは。アナル処女が大事だったら、おくれて射精(だ)せ。おまえの心は、わかっているぞ」

ペニスは口惜しく、地団駄踏んだ。カウパーも出したくなくなった。

竹馬の友、フルチンアヌスは、深夜、玉城に召された。睾丸テステスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。ペニスは、友に一切の事情を語った。フルチンアヌスは無言でうなずき、ペニスの金玉をひしと握りしめた。友と友の間は、それでよかった、フルチンアヌスは、亀甲縛りされた。ペニスは、すぐに勃起した。初夏、満天の星である。

ペニスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、高須クリニックへ到着したのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、患者たちは野に出て朝立ちをはじめていた。ペニスの十六センチのムスコも、きょうは父の股間で朝立ちをしていた。よろめいて歩いている父の、疲労困憊の姿に気付いて驚いた。そうして、うるさく父に朝一番を浴びせた。

「なんでも無い」ペニスは無理に勃起しようと努めた。「市に精液を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの包茎治療を行う。早いほうがよかろう」

ムスコは亀頭をあからめた。

「うれしいか。綺麗なエロ本も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来よう。包茎手術は、あすだと。」

ペニスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って様々なエロ本を広げ、手術後の分をヌキ溜め、間もなく床に倒れ伏し、夢精もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

眼が覚めたのは夜だった。ペニスは起きてすぐ、高須院長の部屋を訪れた。そうして、少し事情があるから、レーザー治療を明日にしてくれ、と頼んだ。高須院長は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の支度も出来ていない、葡萄の季節まで待ってくれ、と答えた。ペニスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。高須院長も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか院長をなだめ、すかして、説き伏せた。レーザー治療は、真昼に行われた。陰茎包皮への、裁断部の設定が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。レーザー手術に列席していたドクターたちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い手術室の中で、むんむん蒸し暑いのもこらえ、陽気に歌をうたい、皮を切った。ペニスも、満面に喜色を湛え、しばらくは、玉とのあの約束をさえ忘れていた。手術は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、ドクターたちは、外の豪雨を全く気にしなくなった。ペニスは、一生このままここにいたい、と思った。この治療済みの陰茎で生涯異性愛者として暮して行きたいと願ったが、いまは、自分の肛門で、自分のものでは無い。ままならぬ事である。ペニスは、わが陰茎に鞭打ち、ついに出発を決意した。包皮の傷がふさがるまでには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永く高須クリニックに愚図愚図とどまっていたかった。ペニスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい陰茎に顔を近付け、

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには余計な包皮がないのだから、決して寂しい事は無い。おまえの父親の、一ばんきらいなものは、勃起を疑う事と、それから、恥垢をつける事だ。おまえも、それは、知っているね。空気との間に、どんな障壁でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの父は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」

陰茎は、夢見心地でうなずいた。ペニスは、それから高須院長の肩をたたいて、

「支度の無いのはお互さまさ。私の体にも、宝といっては、余った皮とアナル処女だけだ。他には、何も無い。包皮は全部あげよう。もう一つ、ペニスの包茎手術を担当したことを誇ってくれ。」

高須院長は揉み手して、てれていた。ペニスは笑ってドクターたちにも会釈して、手術室から立ち去り、待合室にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。ペニスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに勃起すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの玉に、勃起の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って肛門を差し出してやる。ペニスは、悠々と身仕度をはじめた。傷口も、すっかりふさがってる様子である。皮仕度は出来た。さて、ペニスは、ぶるんと両腕を大きく振って、矢の如く陰茎をシコりだした。

私は、今宵、アナルを犯される。アナルを犯される為にシコるのだ。身代りの友の肛門を救う為にシコるのだ。自分のアナルバージンを打ち破る為にシコるのだ。シコらなければならぬ。そうして、私は肛門を犯される。若い時から純潔を守れ。さらば、アナル処女。若いペニスは、つらかった。幾度か、手を止めそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながらシコった。高須クリニックを出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止み、陰茎は高くそそり立って、そろそろ亀頭が熱くなって来た。ペニスは尿道口の液を指先で払い、ここまで来れば大丈夫、もはやアナル処女への未練は無い。皮を剥かれた陰茎は、きっと佳い性器になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに絶頂に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくりこすろう、と持ちまえののんきさを取り返し、『金太の大冒険』をいい声で歌い出した。しこしここすって二里行き三里行き、そろそろエクスタシーの半ばに到達した頃、降って湧いた災難、ペニスの手は、はたと、とまった。見よ、自分の右足を。きのうからの連続自慰で足の筋肉は痙攣し、濁流滔々とふくらはぎで痺れ、猛勢一挙に足の筋を引っ張り、どうどうと響きをあげる激痛が、木葉微塵に筋肉を突っ張らせていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、筋肉は残らず筋が痙攣して感覚なく、回復の見込みもない。痛みはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。ペニスは足を抱えてうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う筋肉痛を! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、玉城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達の肛門が、私のために犯されるのです」

筋肉痛は、ペニスの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。痙攣は痙攣を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はペニスも覚悟した。シコり切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 筋肉痛にも負けぬ愛と性の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。ペニスは、えいやと両足を伸ばし、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う右足の筋肉を相手に、必死のオナニーを開始した。満身の力を掌にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる痛みを、なんのこれしきと掻き続け掻き続け、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。痛みに押し流されつつも、見事、右足の親指を掴み、痙攣を収める事が出来たのである。ありがたい。ペニスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながらエクスタシーの峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊のスーパーフリーが躍り出た。

「待て」

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに精液を出さなければならぬ。放せ」

「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け」

「私にはアナルバージンの他には何も無い。その、たった一つのアナルバージンも、これから玉にくれてやるのだ」

「その、アナルバージンが欲しいのだ」

「さては、玉の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな」

スーパーフリーたちは、ものも言わず一斉に肉棒をそそり立てた。ペニスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その睾丸を握り取って、

「気の毒だが性器のためだ!」と猛然一握、たちまち、六個を握り潰し、残る者のひるむ隙に、さっさと走ってエクスタシーの峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、さすがに右手が疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、ペニスは幾度となく性慾の減退を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、ゆるゆる二、三度こすって、ついに、がくりと陰茎を折った。勃起する事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、筋肉痛を乗り切り、スーパーフリーを三人も撃ち倒し絶倫(ぜつりん)、ここまで突破して来たペニスよ。真の勇者、ペニスよ。今、ここで、疲れ切って勃起できなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがてアナルを犯されなければならぬ。おまえは、稀代の不能の人間、まさしく玉の思う蜜壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、陰茎は萎えて、もはや芋虫ほどにも勃起かなわぬ。下腹部の陰毛にごろりと寝ころがった。陰茎疲労すれば、情慾も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いなふてくされた根性が、金玉の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精力一ぱいに努めて来たのだ。勃起しなくなるまでしごいて来たのだ。私は不能の徒では無い。ああ、できる事なら私の包皮(ほうひ)を截(た)ち切って、真紅の亀頭をお目に掛けたい。愛と信実の精液だけで勃起しているこの陰茎を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精液も性慾も尽きたのだ。私は、よくよく不能な男だ。私は、きっと笑われる。私の陰茎も笑われる。私は友を欺いた。中途で萎えるのは、はじめから勃起しないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。フルチンアヌスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の種を、お互い金玉に宿したことは無かった。いまだって、君は私の射精を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、フルチンアヌス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。フルチンアヌス、私はシコったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私はシコりにシコってここまで来たのだ。筋肉痛を突破した。スーパーフリーの囲みからも、するりと抜けて一気にエクスタシーの峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は萎えたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。玉は私に、ちょっとおくれて出せ、と耳打ちした。おくれたら、身代りの肛門を犯して、私を助けてくれると約束した。私は玉の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は玉の言うままになっている。私は、おくれて射精(だ)すだろう。玉は、ひとり合点して私を笑い、そうして犯す事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠にアナル処女だ。地上で最も、不名誉の人種だ。フルチンアヌスよ、私もアナルバージンを破るぞ。君と一緒に破らせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、アナルオナニーか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私のエロ本が在る。オナホも居る。股間のムスコは、まさか私から逃げていくような事はしないだろう。精力だの、勃起だの、射精だの、考えてみれば、くだらない。人を犯して自分が満たされる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉。――陰茎を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

ふと耳に、潺々、女の喘ぐ音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、エロビデオが流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、消し忘れたテレビから滾々と、何か小さく喘ぎながら全裸の女性が登場しているのである。その全裸に吸い込まれるようにペニスは身をかがめた。画面を両目で見つめて、一くち唾を飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢精から覚めたような気がした。勃起できる。しごこう。肉体の疲労恢復(かいふく)と共に、わずかながら性慾が生れた。射精遂行の欲望である。わが肛門を殺して、名誉を守る希望である。亀頭は赤い光を、陰毛の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の肛門なぞは、問題ではない。アナルオナニーしてお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。シコれ! ペニス。

私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。右手が疲れているときは、ふいとあんな萎える夢を見るものだ。ペニス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び勃ってシコれるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士としてアナルレイプされる事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにアナルレイプさせて下さい。

路行く人を押しのけ、カウパーを跳ねとばし、ペニスは黒い風のようにシコった。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中でシコり続け、酒宴の人たちを仰天させ、犬にカウパーをとばし、小川に垂らし込み、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早くシコった。一団の旅人とさっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、肛門を拡張されているよ」ああ、その男、その男のために私は、いまこんなにシコっているのだ。その男の肛門を犯させてはならない。急げ、ペニス。おくれてはならぬ。愛と性の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。ペニスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、亀頭から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、イカクサの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けて陰茎のようにきらきら光っている。

「ああ、ペニス様」うめくような声が、風と共に聞えた。

「誰だ」ペニスはシコりながら尋ねた。

「フェラシテダシテでございます。貴方のお友達フルチンアヌス様の弟子でございます。」その若いオナニストも、ペニスの後についてシコりながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。シコるのは、やめて下さい。もう、あの方の肛門をお助けになることは出来ません」

「いや、まだ陽は沈まぬ」

「ちょうど今、あの方がアナルを貫かれるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

「いや、まだ陽は沈まぬ」ペニスは包皮の張り裂ける思いで、赤く大きい亀頭ばかりを見つめていた。シコるより他は無い。

「やめて下さい。シコるのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。肛門を広げられても、平気でいました。玉様が、さんざんあの方の直腸をもてあそんでも、ペニスは射精します、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました」

「それだから、シコるのだ。信じられているからシコるのだ。射精する、射精せぬは問題でないのだ。精液の多寡も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為にシコっているのだ。ついて来い! フェラシテダシテ」

「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんとシコるがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。シコるがいい」

言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、ペニスはシコった。ペニスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられてシコった。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、ペニスの精液は疾風の如く刑場にほとばしった。間に合った。

「待て。その肛門を犯してはならぬ。ペニスが発射した。約束のとおり、いま、射精した」と大量に刑場の群衆にむかって精液を飛ばしたつもりであったが、精子が尽きて薄まった液が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の射精に気がつかない。すでに肛門を広々と広げられ、ワセリンを塗りこまれたフルチンアヌスは、徐々に陰茎を差し込まれてゆく。ペニスはそれを目撃して最後の勇、先刻、筋肉痛を堪えたように群衆を掻きわけ、掻きわけ、

「私だ、刑吏! 犯されるのは、私の肛門だ。ペニスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精液一ぱいに叫びながら、ついにアナル処刑台に昇り、押し広げられてゆく友の尻たぶに、齧りついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。フルチンアヌスのアナルクスコは、抜かれたのである。

「フルチンアヌス」ペニスは亀頭に精液を浮かべて言った。「私の金玉を殴れ。ちから一ぱいに金玉を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私の金玉を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ」

フルチンアヌスは、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くペニスの右の睾丸を殴った。殴ってから優しく微笑み、 「ペニス、私の金玉を殴れ。同じくらい音高く私の金玉を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私の金玉を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない」

ペニスは腕に唸りをつけてフルチンアヌスの金玉を殴った。

「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。睾丸テステスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの性慾に勝ったのだ。勃起とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの金玉を迎え入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい」

どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、金玉万歳」

ひとりの少女が、緋のマントをペニスに捧げた。ペニスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「ペニス、君の陰茎は、すっかり剥けているじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、ペニスの亀頭を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ」

勇者は、ひどく赤面した。

(古伝説と、シル出るの詩から)


底本:青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1567_14913.html

2000年12月4日公開
2004年2月23日修正

底本の親本:「太宰治全集3」ちくま文庫、筑摩書房

1988(昭和63)年10月25日初版発行
1998(平成10)年6月15日第2刷

底本の親本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房

1975(昭和50)年6月から1976(昭和51)年6月刊行

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