UnBooks:やい、元LTA

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
移動先: 案内検索

ぼくはアカウントをブロックされた。だれのせいでもない。ぼくが悪い。

えらい人の言うことをきかないで、気に入らない記事をあらしまわった。

トイレから出てきたら、そのりれきはどこにもない。手品みたいに真昼のパソコンから消えてしまった。

「だらしがないったらありゃしない。」

母さんに話したら、母さんはかんかんになっておこった。

「アカウントをブロックされたからって、すぐ新しいアカウントを作れると思ったら、大まちがいよ。」

母さんは、それきり、アンサイの話はしなくなった。

次の日、学校から帰ると、いつものようにのぶちゃんが遊びに来た。

いつものようにアンサイのアイデアを練っていた。

いつものようにアンサイのアイデアを練ったまま、ベルを鳴らしてぼくをよんだ。

ぼくは、いつものようにげんかんの戸を開けて出ていった。

ネカフェへアンサイやりにに行くよ。早く、早く!」

けれど、ぼくは、のぶちゃんといっしょに行かなかった。行かなかったのではなくて、行けなかった。

ブロックやぶりは学校で禁止されていたし、ネカフェまで歩いていくには一時間かかった。

「じゃあな。」

のぶちゃんは、行ってしまった。

ぼくは、自分のネタで笑いながら角を曲がるのぶちゃんを、見送った。

お日様は、ぼくの頭の真上にある。一日は、やっと半分終わったところだ。アカウントなしで、あとの半分をどうしよう。

ぼくの家の隣の原っぱを、お日様が明るく照らしている。日かげに立っているぼくにはまぶしく見える。

まるで、白紙化されたページだ。これからしっ筆が始まるみたいでもあるし、もう消されてしまったみたいでもある。

ぼくは、原っぱへ入っていった。

スマホで投こう記ろくを見てみると、あらしまわったページが出てきた。

ちぇっ、あらしなんかしなければ、ぼくは今ごろネカフェでしっ筆していただろうな。ぼくがいなくて、だれがバカをやっているんだろう。こんなアカウント、すててしまえ。

ぼくは、最後にボロクソ書いてアンサイをやめてしまおうと、自分のトークページを開いた。

すると、ぼくはだれかの横目を感じた。

ぼくを見ていたのは、一人の元LTAだった。

「やい、ブロックされていい気味だぞ。」元LTAの横目はそう言っていた。

生意気な元LTAをおどろかせてやろうと、ぼくは元LTAの書いたページを次々バカにした。

ナイスな判断だ。矛先はあちこちに向いた。

けれど、それだけではなかった。あちこちに向いた矛先はぼう走して、元LTAにぼう言をはいてしまった。

ぼくは息をのんだ。

アンサイ上に、元LTAの数字だけがのこった。のこった数字はしばらくりれきに残っていたけれど、やがてなくなった。

ぼくは投こう記ろくを呆然とながめた。

なんて原っぱは静かなんだろう。世界じゅうの人たちは、みんな自分のアカウントで、アンサイへ遊びに行ってしまったんだ。世界じゅうは空っぽ。ぼくは空っぽな世界のまん中に、ひとりぼっちで立っている。

アンサイが日本にやって来た日、明るいソフィアの下で、ぼくはのぶちゃんと友だちになった。

あの日も、ぼくはアカウントから投こうしていた。

あおってるやつをつりに行った日、けいじ板で、ぼくはのぶちゃんと待ち合わせをした。

あの日も、ぼくはアカウントから投こうしていた。

一発ネタ、二番せんじ、三文記事、いろんな記事の出てくるおまかせ表示を、ぼくはのぶちゃんとどこかへ急いでいた。

あの日も、ぼくはアカウントから投こうしていた。

冬休みに入ったさいしょの日、ぼくはのぶちゃんと久しぶりにアンサイへ遊びに行った。

永久にアンサイクロブレイクした利用者がねむる、即時削除された記事がねむる、まだ見ぬユーモアがねむるアンサイを、ぼくとのぶちゃんはいつまでものぞきこんでいた。

あの日も、ぼくはアカウントから投こうしていた。


一か月たってから、ぼくのアカウントがふっかつした。えらい人にたっぷり叱られて、もどってきた。

その日から、ぼくは学校から帰ってくると、すぐにパソコンの前に行くぼくになった。一度遊びに行ったら夕方まで現実に帰らない、アカウントをブロックされる前のぼくになった。

一か月も二か月も、あっというまにすぎた。

その日は、のぶちゃんがなかなか家に来なかった。

ぼくは待ちきれなくて、となりの原っぱでのぶちゃんを待った。

すると、ぼくは、だれかの横目を感じた。それは、一人のすっかり改心した元LTAだった。

ぼくはしっ筆する手をとめた。

元LTAは、ぼくに、ようやく許された作りたてのアカウントを投げ出して、「見ろよ!」というように、横目でぼくを見ている。

「見ろよ!」

ぼくもあいさつがわりにようこそメッセージを送った。

「おうい。」

のぶちゃんが、タブレットPCを持ってやってきた。

「おうい、ここだよ。」

ぼくは、原っぱを出た。

ふり返ると、元LTAはもういなかった。元LTAのいない原っぱがまぶしかった。

やい、元LTA、せっかく取れたアカウント、なくすなよ。

元ネタ

関連項目[編集]