産めよ、殖やせよ
産めよ、殖やせよ(う-、ふ-)とは、昭和初期に大日本帝国政府が掲げたスローガンである。早い話がアーン♥♥推奨である。しかし、これほど矛盾に満ちあふれたスローガンは日本の歴史をさかのぼってもない。
発端[編集]
このスローガンは昭和14年9月30日に厚生省が掲げた「結婚十訓」の最後に挙げられたものである。
発端は人口増加の勢いが急速に減少したことにある。それまで毎年100万人という規模で増えていたのが昭和13年に突然30万人増と激減したことにある。このままでは兵隊の人手を確保できない。そこで人口増加、そして兵隊の拡張による軍備増強を図るために設定されたのが先述の「結婚十訓」である。
あれ? (その1)[編集]
さっきまで人口増加を嘆いていたのはどこのどいつだ?
この100万人という人口増加を嘆いていたのは当の政府である。人口増加による食糧不足や失業の問題があり困っていたのになにを今更である。この嘆きは政府だけでない。例えば、かの与謝野晶子も『母性偏重を排す』で「我国の婦人の大多数は盛に子供を生んで毎年6、70万ずつの人口を増している。あるいは国力に比べて増し過ぎるという議論さえある。私たちはむしろこの多産の事実について厳粛に反省せねばならない時に臨んでいる」と述べているぐらいだから、むしろこの事態は国を挙げて喜ぶべき状況なのに、である。
あれ? (その2)[編集]
すぐに軍隊を増やしたいんじゃないの?
赤ん坊に銃を持たせるわけにはいかない。子供を作って、その子を育てて軍隊に放り込ませるには少なくとも12年かかる。さらに産まれるには1年近くは掛かる。軍隊を増やしたければ徴兵を厳しくすればよいのに、こんなのんびりした施策を考える時点でおかしい。
結婚十訓[編集]
そして掲げられた結婚十訓は以下の通り。
- 一生の伴侶に信頼できる人を選べ
- 心身ともに健康な人を選べ
- 悪い遺伝のない人を選べ
- 盲目的な結婚を避けよ
- 近親結婚はなるべく避けよ
- 晩婚を避けよ
- 迷信や因襲にとらわれるな
- 父母長上の指導を受けて熟慮断行せよ
- 式は質素に届けは当日に
- 産めよ殖やせよ国のため
あれ?[編集]
量より質重視になってない?
これはナチスの「配偶者選択10か条」を参考にしたと言うのだからその真意は優生思想から来ている。要は「日本民族が発展するには優秀な遺伝子を増やすことが必要だ」という思想であり。いつの間にか、本来の趣旨である「とにかく人口を増やせ」ではなく「優秀な男を捜してアーン♥♥しろ」ということになってしまっている。人が足りないということで設定したのにそんな質を良くする余裕などないはずなのに。
さすがに政府もあとで目的が違っていたことに気づき、子だくさん家族を表彰したりしているが、政府の方針が二転三転するのは今も昔も変わりない。
ルーツ[編集]
スローガンはナチスから引用したものだが、さらにさかのぼると旧約聖書の創世記の言葉になる。神が天地創造した1週間のなかの6日目における記述がそれである。
第6日 地の獣、家畜、土に這う全てのものを創った 神は自分を象って男と女を創造した。神は人を祝福して言った。 「産めよ、殖えよ、地に満ちて地を従わせ、全ての生き物を支配せよ」
あれ? (その1)[編集]
元ネタは「殖えよ」だよ?
「殖やせよ」ではない。別に神は命令していない。人が殖えることを祈っているだけである。ただ、これは大したことではない。
あれ? (その2)[編集]
キリスト教って性はタブーでは?
神の祈りに反してない?キリスト教は同性愛・婚前性交はタブーである。それだけならまだしも、おおっぴらな性についてもタブーとされている。アーン♥♥しなければ人が殖えないのになんで隠しているの? ということになる。この宗教は昔からそうで、神の望みを達成するにはアーン♥♥にアーン♥♥を重ねれば人は増えるのにわざわざ十字軍なんて作って人を減らす、という神に反することを平気でしている。
あれ? (その3)[編集]
なんで神の国で聖書の文言使うの?
神道万歳、天皇陛下万歳という大日本帝国で、施策に邪教の言葉を使うのは問題じゃないの? 「外国(ナチス)で使っているから」という理由だけで邪教だろうが異教だろうが関係なく採用してしまうこの体質は昔も今も変わっていない。
実態[編集]
さて、こうして掲げられたこのスローガンをもとに人口増加作戦を行っていくのだが……このスローガンは有名だけどその成果についてはあまり聞かれない。
この時代の情景と言えば、アーン♥♥なんて状況は考えられず、以下のような情景ではないだろうか。
夕方の公園。 高等学校での勉学を終えた学生と女学校での勉学を終えた女学生。 学問に恋愛に語り合う二人。 そこに猛突進で現れた憲兵。 やってくるなり男子学生に平手打ち。 「このご時世に女と語り合っているとはこの軟弱ものめ!」
あれ?[編集]
質も量もなくなってるんじゃないの?
量重視だったら、この勢いでアーン♥♥まで持ち込ませばよいのだし、質重視ならば今は女性がこの男性の見極めをしている最中だからさせてあげればよい。しかし憲兵の頭の中は軍のことばかり、そもそも甲子園でも「軟弱だから」という理由で選手交代を禁止させるような軍部が権力の上にいてはまともな人口増加が望めるわけもない。
そもそも論[編集]
日本で性をタブーにしたのは帝国政府だろ?
江戸時代までの性はかなりおおらかであった。江戸では吉原で遊ぶのが粋な男と言われ、田舎ではちんこの形をした石を安産の神として祭りってあり、終いにはちんこの御輿を担いで回る祭なんてものもあるぐらい性についてはまったくタブーではなかった。
しかし、明治維新後に「外国ではそうだから」という理由で、邪教たるキリスト教の概念であるにもかかわらず、性がタブーであるという教育を推し進めたのは他でもない政府である。
それまでの日本にはアーン♥♥やりまくりの土台はできており、こんなスローガン掲げるまでもなく子供は増えるはずなのに、わざわざそれをやめさせて後になってさあアーン♥♥しなさいというのは虫が良すぎる話である。
結末[編集]
こんなに矛盾だらけのスローガンを掲げたところで効果があるわけがない。終いには以下の顛末である。
まったく間に合っていません。本当にありがとうございました。
関連項目[編集]
- 女性は産む機械 このスローガンを端的に言い表した言葉。
- 柳沢伯夫 上記の言葉の発案者
- 菅義偉 このスローガンを「産んで国家に貢献して欲しい」と現代語に訳した官房長官
- 団塊の世代 結果として産まれて殖えた人たち
- 結婚
- 優生思想
- 泥縄
- 少子化
- 妊活
- セックス
![]() 本項は下ネタ記事執筆コンテスト2010 (第17回執筆コンテスト)に出品されました。
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