流鏑馬

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
移動先: 案内検索

流鏑馬(やぶさめ)とは、走るの上からを射て的に当てる競技である。騎乗での射的は古くから行われており、『日本書紀』にすでに「馬的射(むなまと)」として出てくる。馬、射的、非常にわかりやすい。それが平安時代になって急に「流鏑馬」と書いて「ヤブサメ」と読ませるこのややこしい名前に変わるのはなぜかといえば、大事件が起こったからである。

Wikipedia
ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディア専門家気取りたちが「流鏑馬」の項目を執筆しています。

奈良にある藤原氏の氏神を祀る神社、春日大社の宮司は、あしひきの山鳥のおのしだり尾の長々し夜の独り寝に耐えかねてよしいっちょセンズリでもこくかと起きてみると、外がやけに騒がしい。ひゅーっ、ひゅーっと言う音がひっきりなしに聞こえ、その合間にウェーイ、という奇声も時折混じる。これはもしや妖のたぐいか、陰陽師を呼ぶべきかなどと考えながら恐る恐る外に出て声のする方へ向かうと、南側の壮麗なる若宮の社殿が無残な姿に変わっているのを発見した。あちこちに矢が突き立てられ、馬でめちゃくちゃに踏み荒らした形跡もあった。矢は鏑矢、先端がカブみたいな形で中が空洞になっており、射ると音が鳴る。騒音の正体はこれというわけだ。宮司が怒りに燃えて振り返ると、木の陰から馬に乗った若者が数人慌てて飛び出し、顔を確認する隙も与えず走り去った。逃げる際に犯人の一人が発した言葉「ヤバくね?ヤバくね?」が転じて「ヤブサメ」となり、今日まで伝わっている。

誰の仕業かは結局わからないまま、時の関白藤原忠通の命によって若宮社殿はすぐに修復され、流鏑馬は宮廷行事となった。むろん、愚かな行いを二度と繰り返させないという思いを込めた儀式としてである。映画『スタンド・バイ・ミー』でオープンカーに乗って走りながらひとの家の郵便受けをバットで壊して回る不良たちのような鬱屈した若者が中世日本にもいたのだろう。他ならぬ藤原さん家のバカ息子がやったとする説もあるが、いずれにせよ不憫だ。穴をあけたカブで性欲を発散するアイデアは彼らにはなかった。

このあと、綿を詰めた笠を的にする「笠懸」や逃げるを的にする「犬追物」が相次いで考案され、鎌倉時代にはこの悪ふざけと動物虐待が流鏑馬とともに「騎射三物」と呼ばれて武士の訓練や公の行事で好んで実演されるようになった。ちなみに、大辞林第三版の犬追物の項には「犬に傷をつけないため蟇目矢を用いる」とあるが、蟇目矢というのは単に鳴る部分を大きく作った鏑矢のことであって、でかい音が出るようになり抵抗が増えるので速度も落ちるだろうが犬が怪我をしないわけがない。馬鹿な言い草だ。お前を射てやろうか。ウィキペディアには「矢が貫通しないように」と正直に書いてある。命中した場所によって評価がなされ、相撲のように技名がついていたらしい。「あっに当たってる、高得点じゃん、すげえなあ」などとやっていたわけだ。武家政治の崩壊までこの状況は続いた。

武士の手で一度は完全にスポーツにされてしまった流鏑馬だが、彼らの勢力がようやく本格的に解体された明治以降、再び儀式として見直されるようになった。今日では日本各地の神社で神事として、衣冠束帯の射手により厳かな雰囲気の中で行われる。

流鏑馬はいくつもの流派に分かれておりそれぞれに厳格な作法が存在するが、詳しくはウィキペディアを参照してほしい。書くのが面倒だから、というだけではなく、ウィキペディアの記述がなかなかに目を見張るものだからだ。一部引用する。

射法は、胴造り及び矢番いに特色がある。ウマを追い出すとともに鞍まわりといって、左右の膝を開き鐙に立ち上がり、身体は鞍と3寸くらい空くようにする。これを鞍をすかすという。身体は前に伏せ、胸をそらせる。一の矢は番えて出るけれども、二の矢、三の矢は箙から抜いて番える。

流鏑馬では声を掛ける。式には一の的手前で「インヨーイ」と短く太く掛け、二の的手前で「インヨーイインヨーイ」と甲声でやや長く掛け、三の的手前では「インヨーイインヨーイインヨーーイ」と甲を破って高く長く掛ける。略では「ヤアオ」「アララインヨーイ」「ヤーアアオ」「アラアラアラアラーーッ」などと掛ける。


この部分だけでもかなりのこだわりが感じられる文章である。射手の動きだけでなく、現場での興奮や緊張も伝わってくるようだ。「インヨーイ」は「陰陽」なのだが、そんなことよりも実際に発せられる音に忠実であることをこの執筆者は選んだ。その真摯な態度を称賛するにやぶさかではないが、結果的に怪文書を生んでいることに感動せずにおれない。あと実際に読みに行ってもらえば分かるが、前章までは「馬」、この章だけは「ウマ」となっており、前章までの執筆者を殺して書き継いだものと思われる。

勝負の一瞬

張り詰めた空気の中で流鏑馬が実演される。熟練の射手の気迫と、そんな射手の姿をブレずにカメラに収めて安くない拝観料の元を取ろうとする観光客の意地がぶつかり合う。一の矢をつがえ、柵に沿って馬を走らせながら、射手は掛け声とともに最初の的の真ん中に矢を打ち込む。続く二の矢。命中、しかし中心から少し逸れる。馬のスピードが増す。三本目を素早くつがえ弓を引く、シャッターチャンス!おばさんの手はデジカメを天高く掲げ、指は正確に連写ボタンを押す。馬は光の速さで通り過ぎる。あとに無傷の的を残して。しかし射手の顔は晴れやかだった。デジカメを確認するおばさん。そこには、人とも馬ともつかぬぼやけた残像が!そう、射手は、勝ったのである。全てが終わると、演者にも観客にも分け隔てなく、新鮮な馬肉をふんだんに使ったヤブサメサラダが振舞われる。これが流鏑馬である。嘘だと思うなら神社の人に訊いてみればいい。怒られるから。