機動戦士ガンダム
『機動戦士ガンダム』(きどうせんしガンダム)は、日本サンライズ(現・サンライズ)制作のロボットアニメである。テレビシリーズアニメとして1979年から名古屋テレビほかで放映された。スタッフにもともとそういうアニメを作ろうという気はあまりなかったのだが、「鉄人28号」から始まった巨大ロボットアニメのうち、「マジンガーZ」を嚆矢とするスーパーロボットアニメ路線に対し、リアルロボットアニメ路線が蔓延するきっかけになった画期的作品。
二次創作[編集]
岡崎優によって描かれた同タイトルの漫画は、ほとんどアニメと内容が一致していない。しかし、これは名古屋テレビと秋田書店が共同して日本サンライズと岡崎に制作させたメディアミックス作品で、厳密にはどちらが原作とは言い難い。「マジンガーZ」、「新世紀エヴァンゲリオン」なども、漫画版がアニメ版に従おうとする姿勢はそれほど強くない。
これに対して富野由悠季が書いた小説版、日本サンライズが制作した映画版、バンダイが捏造した派生させたモビルスーツバリエーションなどは、テレビアニメ版が打ち切りになったため、対キシリア戦、対シャア軍戦が未放映に終わった消化不良から制作された作品であり、基本的にテレビアニメ版への賛美ないし批判によって成立している。第一作ファンにボロクソに言われているGガンダムやSEEDでさえそうである。その後の日本の巨大ロボットアニメの成長も衰退も、すべて機動戦士ガンダムに遠因があると言って過言ではない。
ストーリー[編集]
地球の天然の衛星である月と、人工衛星「スペースコロニー」に人類の総人口の過半数が居住するようになった宇宙世紀0079。なお、後付け設定で小惑星帯にもかなりの人口が居住していることになった。また木星にも百年ほどで帝国が築ける規模の移民が行っている。宇宙世紀0001が西暦何年かは諸説ある。
超合金Zや光子力エネルギー同様、何の説明もなくロケットや航空機より有人操縦ロボット「モビルスーツ」の方が強くなる物質「ミノフスキー粒子」が開発され、モビルスーツ開発に遅れた地球連邦からジオン公国が独立した。軍の実権を握ったデギン・ザビ公王の長男ギレン・ザビは、さらに、民間人を大量に犠牲にするコロニー落としを行い、地球に侵攻した。第一話開始当時、すでにククルス・ドアンは敵前逃亡し、ギレンの弟、ガルマ・ザビ地球方面軍司令は元ニューヤーク市長、エッシェンバッハの娘、イセリナのハニートラップにはまっており、ジオン軍の地球侵攻は停滞していた。
ギレンとしては主戦派のレビル将軍を抹殺し、エルランを傀儡にして地球連邦を間接統治しようとしていたが、その目論見はアムロ・レイたちホワイトベース乗員やシャア・アズナブルによってことごとく打ち砕かれるのだった。
キャラクター[編集]
アムロ、セイラ・マス、ミライ・ヤシマ、カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ、フラウ・ボゥら現地召集兵は最初から戦争に飽き飽きしており、ブライト・ノア、リュウ・ホセイ、スレッガー・ロウら正規軍人も「なんで俺がこんなやつらと一緒に戦わなくちゃいけないんだ」という不満を持ち、大戦末期や学生運動衰退期の厭戦ムードを再現している。
が、敵軍であるシャア、ランバ・ラル、黒い三連星、マ・クベらの柔軟、あるいは堅剛な用兵と「戦争とは」「戦争とは」「戦争とは」という説教の繰り返しによって、軍人として覚醒する。セイラ、カイ、ハヤトらはそれが変な方向に作用し、後半生をゲリラ、扇動活動に費やし、ブライトとミライの息子、ハサウェイに大きな影響を与えた。
メカ[編集]
設定資料によると、ミノフスキー粒子とは、自動照準装置や自動操縦装置、誘導ミサイル、近接信管、あるいはコンピューターそのものを機能停止させる能力を持っているらしい。しかし、劇中ではどれも使われている。まあ好意的に解釈すると、短距離や短時間では、ミノフスキー粒子の効果は働かないのだろう。よってドップやマゼラアタックはガンダムやガンキャノンには歯が立たないはずなのだが、セイラの操縦するGファイターは終盤でリックドムを次々と撃墜している。
アムロやテム・レイによると、ガンタンク、ガンキャノン、ガンダムはジムを開発するための試作機で、連邦軍はジムを開発したあとはさらにコストダウンしていけば必ず勝てるはずなのだが、二次創作作品ではそのことは忘れられている。というより「コスト以外全てを犠牲にした廉価というより劣化機体」とされている。
一方、ジオン軍はジムに対抗する兵器を作らなければいけないのだが、リックドムとビグザム以外の新型モビルスーツ、モビルアーマーは、どれもガンダムを破壊するために開発されたものである。まあクローバーやバンダイが儲けるためには仕方ないか。むしろザクIIやグフやドムやゲルググはともかくとして、よくジムやボールのような売れないメカを出したものだとほめてやろう。
後世への影響[編集]
引きこもりのヒーロー[編集]
それほど多くの作品に影響を与えたわけではないが、碇シンジがエヴァンゲリオンの主役を張れたのは、アムロがいたからに違いない。
ロボット群団同士の戦闘[編集]
すでに「新造人間キャシャーン」で大量生産されたロボット兵が登場し、対コンスコン機動部隊戦のような十人斬り、二十人斬りが描かれているが、ジャブロー戦での量産メカ対量産メカは、ガンダムも連邦軍兵器の一機にすぎないことを視聴者に伝え、後のロボットアニメに多大な影響を与えた。
モビルスーツのプラモデル化[編集]
当初御多分に漏れずクローバーから玩具展開されたが、当然主役のガンダムしかメイン商品化されず、肝心な玩具の出来も、あまりにも子供だまし的なアレな出来だったため、1980年にバンダイからガンダムのプラモ化が決定した時は当時の大きいお友達は狂喜乱舞した。それは後のロボットアニメ作品にも影響を与え、完成品の合金玩具よりもプラモデル化が最優先されるようになった。またガンプラ以降キャラクター系プラモデルの出来も良くなり、それまでスケール系モデラーからは「アニメロボのプラモデルは所詮玩具」「キャラクター系プラモデルは合金玩具を買ってもらえない貧乏人が買うもの」と言われたが、今やその立場は完全に逆転している。
国民への演説[編集]
古代守や宇宙戦艦ヤマトの悪役、キャプテン・ハーロックなど、松本零士原作のアニメのキャラクターもよく演説を行うが、それは味方、あるいは敵の兵士に対する演説で、ギレンのように自国と敵国の国民に自らへの支持を訴えるキャラは、当時あまりいなかった。
「銀河英雄伝説」で、政治家のトリューニヒトが主戦を訴え、軍人のヤンが和平を訴えるという奇妙な構図も、ギレンとシャアのやり取りの影響を受けている。