戦艦ポチョムキン

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
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『戦艦ポチョムキン』(露:Броненосец «Потёмкин»)は、ロシア革命20周年記念に製作されたソビエトのサイレント映画である。この映画により、巨匠エイゼンシュテインの名は不動のものとなった。ちなみに、監督は作中に神父役として出演している。


  第一章-人々とうじ虫 Film:1 time:0

時は帝政ロシア末期、革命への気運が高まってきた当時、

戦艦ポチョムキンの水兵たちは上官たちから不当な扱いを受けていた。

そして、その不満は日々鬱積するばかりであった……

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 船室で Film:1 time:1/07

薄暗く狭い船室にはハンモックが重なり合うようにぶら下がっており、疲れた水兵たちが眠りこけている。狭い船室の中、体の大きい水兵長はぶつからぬよう警戒しながらそこの中を通り抜けようとしたが、足もとばかりを見つめていたおかげでハンモックに衝突した。ハンモックが揺れ、驚いた彼の鬱憤の矛先はその下のハンモックの若い水兵へと向かった。彼は手に持った凶悪な武器、「鎖付き笛」でピチリと水兵の背を引っ叩き、驚いて跳ね起きた顔を見るや「どゅふ!」と哄笑しそのままその場から遁走。叩かれた方の水兵は顔を伏せると「くやしい」と一声叫びそのまま肩を震わせた。新人ゆえに打たれ弱い。

そこに現れたのは、半裸で立派なカイゼル髭を生やした中年男。名前をワクリンチュクといい、本作品の名目上主人公である。手にはなにやらふやけた紙を持っており、登場して早速つばき、鼻水、涙、その他を飛ばしながら妙に「団結」という語句の多い演説を始めた。なるほど、演説用のメモは唾液で濡れているのか。それともその自己陶酔ぶりからアレなのだろうか。

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 肉 Film:1 time:

翌朝、何やら船員、そして彼らを虐げる存在の当直士官たちが集まっていた。ワクリンチュクが何事かとかきわけ近づくと、牛の枝肉らしきものが揺られている。船員が叫んだ、「くさったものを俺たちに食わせるのはやめてくれ!」さらに、「腐肉、跨ぎ。あ、犬って言ったらお腹空いてきた。」、「くせぇ、くせぇ」などと声はどんどん大きくなるばかりである。そこにつかつかとやってきた鼻眼鏡の軍医スミルノフ、彼は身長がもとより低く、屈強な水兵たちの中にいると、こけしほどの大きさに見える。ぶら下がった肉にレンズを2枚重ねにして見、眼鏡をはずして見、またつけて見、やっと彼はこういった。 「これはうじではない、ただの死んだ蠅の幼虫だ、塩水で洗えばよろし。」ハエの幼虫を蛆と言わずして何と言おう、蛋白源とでも言えというのか、当然水兵たちは「日本に捕まっている捕虜だって、木の根は食ってるが腐肉は食ってないぞ!」と憤怒したが、スミルノフはさらにたたみかけるように言った。「上等のうじ虫だ、何も言うことはない。

その後コックがやってきて肉を手斧で叩き切り始めた。プチュ・プチュとはじけ、黄色のクリーミィなタレを流す蛆虫たちに、船員たちは食欲をなくし、黒パンにをかけただけの喉の渇く食事で済ませ、他は船内のヤミ市で手に入れることにした。

ぶくぶくぶく(*大鍋で煮られる肉もといクリーミィな蛆のシーン)そして、例の肉はスープとなったが、船員たちのほとんどがそのマイルドになったスープに手を付けることはなかった。

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 第二章-後甲板上のドラマ Film:3 time:

翌日、司令官ゴリコフは激怒し、水兵たちが甲板に集合させられた。ゴリコフが叫ぶ、「スープに満足した物は二歩前へ!」前へ出たのは3人、ゴリコフは顔を真っ赤にし、「前に出ないと背開きにして帆桁で干すぞ!」と喚いたが、数十秒の沈黙の後も誰も前には出ず、ゴリコフはついにパーンと音を立て破裂。近くの水兵を突き飛ばし、「犬並みに全員撃ち殺してやる!」と絶叫。「そいつらに帆布をかぶせろ!」とワクリンチュクら十数名にマストをかぶせさせた、当時の水兵たちの間では射殺するときに帆布をかぶせるのが慣習である。ワクリンチャクは「マストあったか~い」と頬ずりをしていたが、自らに銃が向けられていることに気が付くと、失禁しマストをしょっぱい水で濡らした。心臓は早鐘のように鳴り、脂汗は彼の額をてからせた。

ゴリコフは叫んだ。「撃て!撃て!撃て!大事なことゆえ三度言った

今引き金が引かれんとする瞬間、ワクリンチュクは銃を構える水兵たちに言った。

兄弟!誰を撃つのだ?

もちろんワクリンチュクにである。その空気を読まないにも程がある発言にゴリコフはまたもや破裂。「あが☆くぁwせ♨@にゅるるのぴ!!!

しかし、その発言は水兵たちを動揺させるには十分であった。数秒すると、皆は銃を下ろしてしまい、ゴリコフは罰当たりな言葉を叫びながら近くの衛兵の銃を奪い取ろうとする。しかしワクリンチュクはヒョコヒョコと砲台に馬乗りになって今度は図太くも「兄弟」という語句の妙に多い演説を始め、それに煽動された水兵たちはついに反乱を起こす。各々銃架から銃を取り、士官十数名対、水兵百数十名での甲板上での戦争が始まったのだった。

一方ワクリンチュクの演説はそのうちに「殺せ」という語句が多くなってきた。主人公にあるまじき行為である。その後砲台から降りたワクリンチュクはエイゼンシュテイン扮する神父の胸ぐらをつかみ「死んでしまえ!この××野郎!」とゆすぶった。監督に脳震盪を起こさせるなど主人公にあるまじき行為である。神父は甲板から階下に落ちるとグッタリとし、一方甲板上では軍医スミルノフが皆に捕まって海へと投げ込まれる瞬間だった。

アラーーーーーーッ!

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 後甲板上のドラマその2 Film:3 time:

落とされたスミルノフは縄に絡まっていた。絶望的な面持ちで縄を必死でつかむも、水兵たちは何の容赦もなく縄を振り回し、ついに耐えきれず、彼はどぼんと地味な音を立て水面へと落ち、水兵たちは大きくなれよとばかりにぶくぶくとアブクを立てる彼の体へうじ虫を振りかけ、彼がすっかり沈んでしまった後も、縄に引っ掛かった彼の鼻眼鏡は揺れていた。

数分後、士官の多くは水面でアップアップしながら弱弱しく助けを求め、ついに水兵たちは「我々の勝利だ!」と叫び、皆で喜びを分かち合った。しかし、士官長ギリャロフスキーとワクリンチュクの戦いは、いまだに続いていたのである。数分間の戦いのおかげで血みどろになり、ウインチの上でヨタヨタしているワクリンチュクを発見したギリャロフスキーは銃を取ると、彼の後頭部へ向けて引き金を引いた。弾丸を喰らった彼は力なく落ち、縄に途中だらしなく引っかかった。主人公にあるまじき姿である。その時水兵の一人が「あ、ワクリンチュク落ちる」とつぶやいたが、誰も気にかけなかった。

数分後、彼の体は思い出されたように水揚げされたが、すでに口からうきぶくろが飛び出しており息はなかった。映画が始まってまだ29分しか経っていないというのに主人公が死んでしまったのである。水兵たちはポチョムキンで彼をオデッサの漁港に水揚げし、彼の体の上に一枚の紙を置いた。

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 第三章-死者の呼びかけ Film:4 time:

彼の体は、直ちに水兵たちの間で「革命のために犠牲になった同志」として祭り上げられ、見世物小屋として急遽築造されたテントで囲まれた。「革命に命を捧げた偉大なる同志の御神体、おさわり1ルーブル」との看板に、日頃から帝政に不満を持っていた港町の人々は続々と押し寄せ、彼の体を囲み、「倒れた闘士を永遠に記憶せよ!」、「ユダヤ人は死ね!」などと悲喜こもごもの声を発した。そして、テントの中で数分間歔欷の声が聞こえたかと思うと、突然「ひとりは皆のために、皆はひとりのために」と三度叫ぶと、歓喜の声を上げながら、「何かをチョン切る音」を立て、数分後にはホクホク顔で出てくるのであった。そして、各々の手には、一家族あたり一ヶ月分は優にあろうかという肉塊が握られ、数分後には炊き出しが始まった。

こうしてワクリンチュクを摂取したことにより彼の遺志を継いだ皆は、むらむらと革命への意思を燃やし、オデッサの大階段の前で演説、罵詈雑言、と好き勝手にのたまい、次第に騒ぎは大きくなってきた。偶像化されいけにえになったワクリンチュクによって、市民の革命への意思が芽生えたのである。そして、市民たちのその声に応えるかのように、港のポチョムキン号のマストには水兵の手によって共産主義の象徴である赤旗が揚げられた。この旗は常に人の血で塗られ続けなければならない呪われた旗であることは、この頃誰も知りえなかった。

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 第四章-オデッサの階段 Film:4 time:

しかし、民衆たちの団結は長くは続かなかった。急に階段上部にいた民衆たちが逃げるように階段を駆け下り始めたのである。下の方の民衆は事態の理解をする間もなく潰され、プチュプチュと音を立てる。そして一間隔開け、階段の上から現れたのがツァーリに雇われたウクライナの部族、コサックたちの軍列であった。コサックたちは「それ撃ちますよ」とも言わずに突然一斉射撃、逃げまどう民衆はバタバタと倒れ、母親につられていたはずの子供も倒れた。

子供の手を握っていたはずがいつの間にかいないことに気が付いた母親は、倒れていた子供をつかむと、なぜかコサックたちに向かって「子供が重症でーーす」と言いながら突然前進を始めた。こんなことを言いながら子供を盾にして戦いを挑もうというのだ、まさに外道である。しかしコサックたちは表情一つ変えず銃を再び構え、この後この母親がどうなったかは言うまでもなかろう。民衆とコサックがおしくらまんじゅうを始めたおかげで混乱を極める階段の上からは、親がいない乳母車が転がり落ちてきた。

カターン、カターン、カターン

この乳母車の行く末は劇中では語られていないが、その後も等速直線運動を続けたようで、ブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』では主人公のエリオット・ネスがこの乳母車をやっと停止させている。しかしコサックたちを止めようという行動はまだ続き、眼鏡の女教師が説得に赴いたが、サーベルで一刀の元に斬り伏せられ、目から出血、眼鏡が死亡した。ちなみにオデッサの階段のシーンは、映画史上もっとも有名な6分間と称されるが、多分そんなことはない。

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 艦隊との出会い Film:5 time:

戦艦ポチョムキン号の朝は、苦い朝であった。ポチョムキン号は昨日コサックたちに一矢報いようとオデッサ劇場を砲撃しただけに終わり、オデッサ港を出港した戦艦の内部では、議論が夜明けまで続いた。おかげで喉が潰れた水兵マチュシェンコは、隣の水兵に向かってこう言った。「グエッ、グエエ、グヒッヒッ」隣の喉の潰れた水兵はまた隣に向かって「グヘッ、ググ、ヒヒヒヒ」と言い、一本の煙草をマチュシェンコに渡した。彼は受け取って深く吸うと、空気の抜けた風船のように煙を吐き出す。そのとき、船主の方で大きな声が聞こえた。「フガガガ!フゲゲ!(水平線に艦隊が!)」

船内はにわかに緊迫した。敵か味方か?水兵は皆飛び起きると、各々配置につき、マチュシェンコは甲板に登り「フガガ、グヘッ!(戦闘準備!)」と命令を下す。水兵たちはなぜマチュシェンコがワクリンチュク亡き後のポチョムキン号のリーダーになっているのか一瞬考えたが、黙ってタラップを引き上げ、弾薬架から弾丸と装薬を運び出し、帆布の上に弾薬を並べた。砲台が回り、マチュシェンコ伝声管に口を寄せて……「フガガ!(全速力!)」
(*これからピストンが上下するシーンが20秒近く流れます。)
フガガ、グヒヒッヒ!(敵は射程距離内に入った!)」緊張が高まる……「グヒヒヒフガガッカ、グヒヒ(「我々に合流せよ」と信号せよ!)」と伝声管で伝えるマチュシェンコ、水兵が艦隊に向けて手旗信号をぎこちなく送る。

無気味なほど静かな時間が流れ、こうして、相手の艦隊を目前に臨むまでになった。砲台は正面を向き、弾薬も装填されいつでも発射できる状態である。老水兵が落ち着かない動きで砲台の引き金であるロープを握りしめ、マストの上の赤旗、抱き合う水兵、不安な面持ちのマチュシェンコ、抱き合う水兵、抱き合う水兵……しつこい。砲台が大写しになり、テロップが入る。

発砲か?……それとも?

砲弾を持つ水兵たち、引き金のロープを持つ老水兵……その時、にわかに中央の水兵の顔がほころんだ。

兄弟たちだ!

万歳!

水兵たちは皆船から身を乗り出し、歓喜の声を上げて手や帽子、砲身もといムスコを振った。艦隊の水兵もそれに応えるかのように帽子やカツラを惜しげもなく海面へ投げた。両艦隊は何をしでかすわけでもなく無事にすれ違い、画面には艦隊のさざなみだけが残った。

最後に画面へどんどん近付くのは、身を乗り出した水兵たちを乗せたポチョムキン号の船首、どんどん大きくなるポチョムキン号の船首、画面を黒く塗りつぶすポチョムキン号の船首……

おわり

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