かんたん漢字

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「福田君の言ったことで私が今『參った』と頭を下げざるを得ないことが一つある。それは彼がかう言ったことである。 『文部省の役人たちは、漢字はタイプライターなどへかからないから惡い、減らさうと言ふ。それは人が機械に使はれてゐるんだ。機械は人が使ふものだ』 私は文學者といふものは妙な理屈を言ふものだ、と心の中で笑ってゐた。 (中略) が、戰後三十餘年たってみると、驚いた。ワープロといふ機械が發明され、普及し、机の上でチョコチョコと指を動かすと、活字の三千や四千は簡單に打ち出してくれる。さうした普及につれて値段も安くなり、性能がよくなった。新聞ぐらゐは、机の上のワープロ一つで簡單に印刷できる。これなら當用漢字の制限はしなくてもよかったし、字体でも假名遣ひでも昔のままでよかったのだ。」
かんたん漢字 について、金田一春彦[1]

かんたん漢字(かんたんかんじ、Kan-tan Kanji)とは、漢字を適当に簡略化し字体数を制限することで、庶民に普及させようとする規格。しかしこれは表の顔で、実際には漢字を廃止するために作られたものだったことが発覚した。

歴史[編集]

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ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディア専門家気取りたちが「当用漢字」の項目を執筆しています。
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先の戦争に敗れた直後の日本に於いて、一部の左翼から「漢字なんて難しい字体を使ってるから戦争に負けたんだ」との声が出た。当時はGHQが日本語のローマ字化を推進中で、志賀直哉の様な文壇の大物が日本語廃止・フランス語公用語化といった更に極端な意見を表明した。金田一春彦ら一部の学者も「戦争で印刷工が戦死し『文選一里』と言われるほどの漢字活版作成作業が維持できない」との論を張ったことから[2][3]、政府が漢字を廃止するために作った規格が当用漢字である。

ここで、当用漢字とは「漢字自体を廃止するまで、分の間だけ使が許された漢字」の略である。つまり、短命に終る筈の規格だったので、漢字数の少なさや、字画の行き当たりばったりな略し方など、中身が矛盾だらけのやっつけ仕事であったのにも関らず、そのまますぐに施行された。

しかし、日本語と漢字かな混じり文は切っても切り離せないものであったため、規格の目的に反して、漢字の使用頻度はあまり減らなかった。制定から数十年経っても同じ状況が続き、漢字の廃止など不可能であることが自明となった。

そこで、漢字を廃止する目的など「最初から無かった」ことにするため、当用漢字の前文をちょこっと書き直し、漢字を若干数追加した常用漢字が作られた。その際、前文の「制限」を「目安」に変更することで批判を避け、この規格が事実上の標準となったまま、惰性で現在に至る。

当用漢字や常用漢字は、近年日本を代表する文化である「かんたん作画」に倣って「かんたん漢字」とも呼ばれる。かんたん漢字は新聞や教育で全面的に採用されたため、かんたん漢字以外の漢字を書ける者が減り、国語表現の幅が狭くなりつつある。

字数の少なさを嘆く声の多さに負けたのか、2010年末に規格が改定され、使用頻度調査の上位の漢字が追加された。しかし字形については、かんたん漢字が策定される前の字体のまま追加された。表向きは、「かんたん漢字に入れる時に変更すると混乱するから」との理由だが、規格を策定した際に、それまでの字体を弄って混乱を起こした事実を、無かったことにしたいのが本音らしい。この方法だと、規格内で略し方が矛盾する字形が増えるのだが、その混乱には目が行かない模様である。

特徴[編集]

従来の漢字と、かんたん漢字の対比。かんたん漢字は右列…と見せかけて、実は左列。
この字もかんたん漢字か?
不規則な省略
規格策定者の気分によって、同じ部品を持つ漢字でも略し方を変化させる。これにより字源が不透明になり、漢字を理論的に覚えることが困難になる。
例: 同じ「蜀」に属する漢字を、「屬」⇒「属」、「獨」⇒「独」、「濁」⇒「濁」とバラバラに簡略化。
例: 「羽」の「ノノ」部を「ン」と略しておいて、「曜」=「日」+「羽」+「隹」での「羽」は「ヨ」の形に略してある。
例: ロシアの漢字表記「露」⇒「ロ」。マスゴミで数多く採用。
美しさの追求
かんたん漢字は突発的に作られたものではあるが、政府の正式な規格である以上、それなりの格式を保つため、見た目の美しさも考慮してある。
例: 「国」はもともと中央部が「王」の略字しかなかったのだが、「見た目にきれいじゃない」との理由で「玉」に整形された。詳しくは次の引用文を参照されたい。
「点がついたのは、主としてデザイン上の問題だった。『王』では、四角の中をさらに細かく仕切るようで、見た目にきれいじゃない。そこでホクロをつけたんですよ」
かんたん漢字 について、文字改革等調査団団長[4]
例: 「祕」(従来の漢字)⇒「秘」(かんたん漢字)。「凜」(正字)と「凛」(俗字)の例でもわかる様に、昔から「のぎへん」と「しめすへん」は混同されやすかった。つまり「秘」は俗字なのだが、なぜかこちらの方が正式な規格として採用された。これも見た目の美しさを追求した結果であると推察できる。
画数の増加
先の項目とも関係するが、かんたん漢字の名前に反しようとも、美しさのためには画数を増やすことすらあった。
例: 「降」(ヰ)「邪」(牙)「卑」「免」「歩」「政」「肺」「孤」(瓜)「臣」「叫」
漢字の統合
形や読みの似た漢字を適当に統合することにより、覚える漢字数が少なくて済む。ただし、一つの漢字にやたら多くの意味・読みが生じ、それはそれで覚えにくいといった側面がある。
例: 「缺(かける)」と「欠(あくび)」は「欠(かける)」に統一され、「欠」にあった「あくび」の意味は規格外となった。これにより、「なぜ『欠伸(あくび)』には「欠」が入ってるの?」といった子供の純粋な疑問に回答できない親が続出。
例: 「予(われ)」と「豫(あらかじめ)」を「音読みが同じだから」と「予」のみに統合。「預」が統合対象に入らなかったのは謎である。とにかく、これを現代的に表すと、「明日から「齢」の字を「令」に統合し、『高齢』を『高令』と書くのが正式になります」位のインパクトがある。
パーツの共通化
前項とも関係するが、いくつかの部品を共通化することにより、覚える部品が少なくて済む効果が生まれる。ただし、全く成り立ちの異なる漢字が親戚に見えてくる問題がある。
例: 「東」または「柬」を含む漢字は、すべて「東」の形に書くことになった。これにより、「棟」と「練」が同じ「東」を含む漢字に見える。実際には、「練(レン)」は「糸」+「柬(カン)」の形声文字であり、「東(トウ)」とは関係ない。
漢字の置換と混ぜ書き
「かんたん漢字に無い漢字は、かんたん漢字にある漢字で置換するか、ひらがなで混ぜ書きをする様に」との御達しが出た。これは、かんたん漢字以外の漢字を庶民から遠ざける効果がある。ただ、無理やり読みの同じ漢字を持ってきたため、意味が全く通じなくなった例や、却って画数の増えた例もある。
また、混ぜ書きには「何だか見た目がダサい」「本来の表記が覚えにくくなる」「熟語の意味が見た目からは解りにくくなる」といった効果がある。
例: 「月蝕」⇒「月食」。「障礙者」・「障碍者」⇒「障害者」。「氣魄」⇒「気迫」。「交叉」⇒「交差」(画数が増えた例)。「颱風」⇒「台風」(熟語に共通するパーツが崩れた例)。
例: 「真摯」⇒「真し」。「進捗」⇒「進ちょく」。
使用頻度を無視した実装
日常ではほとんど使用されないが、「天皇関係の文字だから」との理由で「璽」が規格に採用された一方、「叶」「叩」「」などのもが知る漢字は、長いこと規格外であった。この陰には、「どうせ漢字は廃止されるんだから、漢字を規格に入れる基準も適当でいいや」といった、規格策定者のやっつけ仕事っぷりが見て取れる。

関聯項目[編集]

  1. ^ 金田一春彦「福田恆存君を偲ぶ」『THIS IS 読売』平成7年12月号、読売新聞 (福田恆存『私の国語教室』文藝春秋〈文春文庫〉、2002年3月10日、358頁より)
  2. ^ 金田一春彦「日本語(新版)」 岩波書店 1988
  3. ^ 金田一春彦「日本語は京の秋空」 スタジオシップ 1993
  4. ^ 読売新聞社会部編 『日本語の現場 第一集』 読売新聞、126~127頁 (平成十七年一月三十一日の闇黒日記より)